賞味期限をめぐる非科学的な消費者心理は不必要な食品ロスにつながる

しかし、消費者は昔の感覚のまま「まんじゅうはすぐ腐敗する、悪くなる」というイメージを持っているので、賞味期限が長いと逆に「不自然。なにか、体によくないものが入っているに違いない」と誤解してしまうのです。

こうした消費者心理を踏まえ、食品の種類によっては以前、かなり短めに賞味期限が設定されていました。つまり、科学的に得られるおいしく食べられる期限に安全係数として小さな数字をかけ算して、それを賞味期限として表示していました。

賞味期限が短いと、小売店やスーパーマーケットは食品を長く店頭に置いておけずすぐに返品となり、食品ロスにつながります。そこで、消費者庁は食品表示Q&A(加工‐22)で、一般的な食品について0.8以上という安全係数の目安を示し、「食品ロスを削減する観点からも、過度に低い安全係数を設定することは望ましくない」とわざわざ明記しています。

消費者心理は不思議なもの。日持ちして欲しいけれど、長すぎるのはイヤ……。まったく非科学的です。現代の衛生管理技術と人の心は、どうもマッチしません。しかし、賞味期限に対する判断は科学的でなければ、不必要な食品ロスにつながります。

ちなみに、缶詰は種類によっては日数が経った方が熟成が進みおいしくなるそうで、私は「この製品は、賞味期限が切れた頃がもっともおいしい」と缶詰企業の社員から教えてもらったことがあります。新しければいい、とはやっぱり言えません。

写真=iStock.com/taa22
※写真はイメージです

2.「期限なんて気にせず、五感で確かめて食べればいい」は危ない

よくいますね。「昔は製造日が表示されていて、消費者は五感で食べられるかどうか賢く判断していたものだ。人任せ、事業者任せにして期限表示に頼るからダメなんだ」と言う人が。でも、賛成できません。

まず、腐敗菌と食中毒菌は異なるため、食中毒菌が増殖した食品を臭い等で判別することはできません。それに、消費者が感覚で判断するようになればそれこそ、半年日持ちがするまんじゅうが2、3日で捨てられてしまうでしょう。

技術が著しく発展しているため、消費者が自分で判断して食べる、というのが難しくなっています。世界的にも、製造日ではなく事業者が責任を持って決める期限を明示するのが標準となっています。