企業活動を拘束する法律を守らない巨大企業

さらに、GAFAM各社は自分たちの企業活動を拘束する法律を遵守しない。

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ヨーロッパでは2016年以降、「EU一般データ保護規則(GDPR)」によって全ヨーロッパ市民の情報が保護されることになったが、GAFAMはこの規則を遵守せず、扱いに注意を要する消費者の情報(とりわけ、個人の健康状態に関する情報)の利用に関して、消費者に充分な説明に基づいた選択肢を提示していない。

これらの企業は、特定の政治候補者に有利になるメッセージを選りすぐり、また各国政府に対するロビー活動に莫大な資金を投じるという政治的な目的のために消費者の個人情報を利用している。

現在のところ、これらの企業は各国共通の最低法人税率(12.5%)の導入を阻止している。仮に、この税率が適用されれば世界全体で税収が1000億ドル程度増加するという。

「人工物が支配する世界」が待ち受けている

2017年、デンマークがGAFAM担当大使を任命したように、一部の国はGAFAMを国家と同等の立場にまで引き上げている。GAFAMの創業者である大株主の一部も、個人あるいは財団を通じて影響力のある政治活動家と見なされるようになった。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、国を除くと世界保健機構(WHO)への最大の寄付者〔国を含めた全拠出元のなかでもアメリカに次いで二位〕であり、予防接種プログラムの拡大を目指す「GAVIアライアンス〔旧・ワクチンと予防接種のための世界同盟〕」の創設パートナーにさえなった。

マーク・ザッカーバーグは、医療、教育、科学研究、エネルギーの分野での機会の平等を推進する活動に従事している。これらの慈善事業は、完全な利他主義に基づく場合もあれば、自社の売り上げを伸ばすための場合もある。たとえば、フェイスブックはWHOに広告枠を無料で提供することによって、WHOがフェイスブックを利用するように仕向けている。

GAFAMに相当する中国企業も、GAFAMを上回る演算能力や人工知能に関する知識、そして巨大な中国市場という活動領域を活かして同等の力をつけた。現在のところ、これらの中国企業は中国共産党と国に忠誠を誓っている。

いずれにせよ、これらの企業が生み出すものこそが、われわれを待ち受ける挑戦だ。すなわち、人工物が支配する世界である。