経済学の入門書より、SFが役に立つ

これらの出来事を予測して阻止するには、単なる見通しを超えて、あらゆる想像力を駆使しなければならない。

過去から教訓を見出して同じ出来事の再来に備えるだけでなく、予期せぬ未知の出来事への備えも必要だろう。そうした準備には通常の数値分析よりも、突拍子もない分析のほうがはるかに役立つ。つまり、経済学の入門書よりもサイエンス・フィクション(SF)のほうが有益かもしれないのだ。

サイエンス・フィクションの多くの書籍や映画は、昔から人類にとっての脅威を語り、われわれに未来を占う手段を提供してきた。パンデミックに関する作品のなかから、ほんの少しばかりを次に紹介する。

メアリー・シェリーのSF小説『最後のひとり』〔森道子ほか訳、英宝社、2007年〕、ジャン=ピエール・アンドルヴォンのSF小説『Le monde enfin』、ダニー・ボイル監督のSF映画『28日後…』、マーク・フォースター監督のSF映画『ワールド・ウォーZ』、デオン・マイヤーのSF小説『Koors〔仏題:L'Année du lion、英題:Fever〕』、ラッセル・T・デイヴィス制作・脚本のテレビドラマ『Years and Years』、スティーヴン・ソダーバーグ監督のSF映画『コンテイジョン』などだ。

SF作品を通じて「最悪の自体を避ける方法」を学んだ

また、パンデミックの脅威以外にも人類のサバイバルに関する作品はたくさんある。たとえば、リチャード・マシスンの古典的名作『I Am Legend』〔『地球最後の男』田中小実昌訳、早川書房、1977年、『アイ・アム・レジェンド』尾之上浩司訳、早川書房、2007年〕、あまり知られていないがバーナード・ウルフのSF小説『Limbo』、そしてつい最近出版された劉慈欣のSF小説『三体』〔大森望ほか訳、早川書房、2019年〕だ。劉慈欣はこの三部作〔『三体』を第一部とする「地球往事」シリーズ〕において、異星人が450年後に人類を滅ぼしにやってくると知った人類の反応を描く。

紹介した以外にも多くのサイエンス・フィクションがこれまでに私の想像力を養い、また、今も養い続けてくれている。

私は、経済や政治科学のどんな評論よりもこれらの作品からはるかに多くのことを学んだ。

サイエンス・フィクションを通じて、私は枠にとらわれずに考えることを学んだ。意外なところに光ある道筋と闇の道筋を探すことを学んだ。

また、私はサイエンス・フィクションを通じて、最悪の事態を避ける最良の方法は備えること、そして愛することだと気づいた。