ホテルの一室で食べるカップラーメンの美味さ
そしてこの「目黒のさんま」。
殿様の無知を笑うというのが従来の見方ではありますが、はたしてそうなのでしょうか?
当時の目黒は山奥ですから、さんまは獲れたてではなく塩漬けされたかたちで運ばれてきたはずです。運ばれる日数がアミノ酸分解を促し件のさんまにはうま味成分がふんだんに出ていたのではないでしょうか。つまり目黒で獲れるはずのないさんまを「目黒に限る」といった殿様の世間知らずを嘲笑するのではなく、本当に美味いものに対する感度を実は殿様の舌が有していたのでは、とも思えてこないでしょうか?
実際、高級料理ばかり食べ続けているとホテルの一室で食べるカップラーメンが心底美味しかったりもしますし、私などは「メロンパンは安いほどおいしいのかも」とすら思ってもいます。
落語は「日本人の失敗予言書」である
ま、とにもかくにも。
こんな具合に、「目黒のさんま」は、昔から「人間って、強い奴には誰もが忖度してしまうものなんだよ」と謳い続けてきたのです。そんな見方をしてみると、「目黒のさんま」に限らず、落語は「日本人の失敗予言書」にすら思えてきます。
みなさん、落語を聞きましょう。
そして、『安政五年、江戸パンデミック。』ならびに『落語はこころの処方箋』、くれぐれもよろしくお願いします。