3年前の最高裁初判断は受信料制度を「合憲」としたが…
「NHKの受信料」と聞いて思い出すのが、2017年12月6日に言い渡された最高裁大法廷の初判断である。
最高裁はNHKの受信料制度を「合憲」としたうえで、「テレビを設置すれば受信料の支払い義務が生じる」という判断を示した。しかし、現実的にはITの分野などで大きな技術革新が進み、旧来の方法や法規が時代に合うのかという検証課題が残されたままである。
たとえば、民放がなかった時代、テレビを設置した時点で契約義務が発生するという規定には意味があった。NHKの契約とテレビの設置は同義だったからだ。しかし、民放が多く存在するいまは、事情が大きく違う。放送法は遺物のような存在なのである。
パソコンやタブレット、スマートフォン、それにカーナビでもNHKのテレビ番組は見られる。そうした新しいツールと受信料を私たち国民が納得できるようにどう結び付けるのか。現代にふさわしい受信料制度のあり方が問われている。
最高裁は「一方的に支払いを迫るのではなく」とくぎを刺した
最高裁判断が受信料支払いの義務を原則的に認めたことで、NHKは受信料の徴収を強化してきた。ただし、最高裁は「一方的に支払いを迫るのではなく、理解を求めて合意を得ることが大切だ」とNHKにくぎを刺していた。
また各紙も最高裁の判断を受け、NHKに注文を付けていた。たとえば2017年12月7日付の朝日新聞の社説はこう書いている。
「メディアを取りまく環境が激変し、受信料制度に向けられる視線は厳しい。それでも多くの人が支払いに応じているのは、民間放送とは違った立場で、市民の知る権利にこたえ、民主主義の成熟と発展に貢献する放送に期待するからだ」
「思いが裏切られたと人々が考えたとき、制度を支える基盤は崩れる。関係者はその認識を胸に刻まなければならない」
また、読売新聞の社説(2017年12月7日付)も、こう主張している。
「(NHKが)事業を野放図に広げれば、民業圧迫につながる。事業拡大に突き進むのではなく、受信料の値下げを検討するのが先決だろう」
今回のNHKの「制度改正のお願い」は、こうした指摘への回答としては不十分だ。