テレビがあってもなくても、NHKに届け出が必要に
10月16日、NHKが総務省の「公共放送の在り方に関する検討分科会」に説明資料を出した。その中にあった「制度改正のお願い」が波紋を広げている。ポイントは大きく以下の3つである。
①テレビを設置した場合の「届け出」の義務化
②テレビを設置していない場合の「未設置の届け出」の義務化
③受信契約を結んでいない世帯について、居住者の名前や転居先を公共機関などに照会できる制度の導入
②テレビを設置していない場合の「未設置の届け出」の義務化
③受信契約を結んでいない世帯について、居住者の名前や転居先を公共機関などに照会できる制度の導入
これは事実上、受信料の支払いを法律(放送法)で義務付けることで、受信料の不払い問題を解決しようというものだ。驚くべき要望だ。
NHKによれば、全国の世帯のうち契約世帯は4151万で、世帯支払率は82%。残りの2割(1372万世帯)は受信契約を結んでおらず、公平負担の点から問題がある。さらに未契約世帯への訪問のための人件費などに年間305億円の経費がかかり、さらに繰り返し訪問を行うことでクレームやトラブルも発生している。
NHKは「人海戦術による極めて不本意な経費の発生」と判断し、3つの要望を出したという。
しかし分科会の有識者からは「NHKに届けなければならないという大きな心理的苦痛が生じる」「名前や引っ越し先の住所の照会は受信料を求める方法として適切なのか」として、NHKに慎重な対応を求める意見が相次だ。
武田総務相「国民の納得を十分に得る必要がある」
有識者の懸念は当然だ。NHKの要望は強圧的で、国民の気持ちを理解しているとはいえない。まるで一党独裁国家の中国や北朝鮮が国民を支配するかのようなやり方である。空恐ろしくなる。
さすがの武田良太総務相も強く感じ入るところがあったのだろう。20日の閣議後の記者会見では「かなり厳しい意見がNHKに寄せられていることは承知している」と述べ、こう続けた。
「今後の議論を見守りたい。NHK自身が改革意欲を持ち、すべての問題に取り組んでいただきたい」
もともと武田氏は「受信料制度を改革するには、国民の納得を十分に得る必要がある」との認識を示していた。それだけに自重しているのだろう。