テイクアウト対応品として「ラーメンバーガー」が登場
デリバリーとともに、コロナ禍の中でラーメン店が新たに手を広げたのがテイクアウトである。店内で提供しているメニューはもちろん、味わいの変化を最小限に抑え、また容易に持ち帰れるように汁なしソバやまぜ麺、冷麺など、テイクアウト専用のメニューを新たに設定したところも少なくない。
特に異彩を放ったのが、次々に独創的なメニューを打ち出すことで知られる「MENSHO」グループがテイクアウト対応品として開発した、ラーメンバーガーである。チャーシュー、メンマ、ネギといったラーメンの具材と、とんこつ煮干しスープ味のソースを、焼き固めた自家製麺のバンズで挟んだものだ(ただし現在は提供休止中)。
「ちゃんと商品として成立していて、ちゃんとおいしい。ただハンバーガースタイルで食べるのなら、個人的には普通のパンと牛肉パティの組み合わせのほうが好きかな(笑)。とはいえコロナ禍におけるユニークなアイデアとして、ああいった取り組みも評価すべきだと思いますね」(大崎氏)
競合相手の代行販売をする画期的なプロジェクトも
またラーメンは、あとは加熱するだけという半完成品のスープ、麺、具材があれば、家庭でもかなり再現性の高い料理。その特性を生かしたラーメン店らしいコロナ禍対策が、通販用商品だった。
「煮干しラーメンで知られた『ラーメン凪』の動きにはうなりましたね。素早くEコマース事業を立ち上げて自店の通販用商品を開発しただけでなく、ラーメン業界全体を何とか支えようと、同じように苦境にあえいでいる都内の有名店から麺とスープを販売価格と同じ値段で買い取り、パッケージングまで行って、他店ブランドの商品として自社サイトにラインアップしたんです。つまり自店の製品だけでなく、競合相手の店の商品も代行販売したわけですね。そんな英断に心動かされたラーメンファンは多かったようで、販売開始の4月末から数カ月間、ものすごい売れ行きだったと聞きます。扱ってもらった競合店も、助けられたのではないでしょうか」(大崎氏)
「RAMEN STOCK(ラーメンストック)」と名付けられたこの画期的なプロジェクトを通じて期間限定販売されたのは、「中華そばムタヒロ」「カラシビ味噌らー麺 鬼金棒」「我武者羅」「東京スタイルみそらーめん ど・みそ」「ラーメン大至」といった店の看板メニュー。いずれも名店の誉れ高いところで、ファンにとっては垂涎のラインアップだった(現在はいずれも販売終了)。
それぞれの経営者たちは、考えられる限りの方策で懸命に苦境と対峙し、戦い、乗り越えようとしている。しかし、すべてのラーメン店がサバイバルに成功したわけではない。