ラーメン店の倒産は過去20年で最多を更新することが確実
帝国データバンクの調べによれば、今年は9月までにラーメン店の倒産が34件判明している。9月までの累計で30件を超えたのは2000年以降初めてで、過去最多となった19年通年(36件)の件数に並ぶ勢い。このペースが続けば、ラーメン店の倒産は過去20年で最多を更新することが確実なのだという。
以前から抱えてきた店舗過多や低価格競争といったラーメン業界特有の構造的問題に加え、今年はコロナ禍という予想だにしなかった厄災にまで見舞われたのだから、持ちこたえられなくなる店が続出するのも無理はない。
夏を超えても、伝染拡大が完全収束に向かう気配はまだ見えないまま。だがいずれ、“ポスト・コロナ”と呼べる段階がやってくるはずだ。そうなった時、ラーメン店はどのような変貌を見せているのだろうか。
「店内の衝立や席の間引きはなくなるとしても、テイクアウト、デリバリー、通販に取り組むところは今以上に増え、ラーメン店の新たな収入源として、コロナ禍終息後もそのまま定着するでしょうね」(大崎氏)
深夜客で稼いでいた店は、回復まで時間がかかる
その一方で“今そこにある危機”、例えば大手企業をはじめとしたテレワークの常態化は、とりわけ都市部のラーメン店に暗い影を落としている。
「東京なら銀座、神田、新橋あたりはサラリーマンが激減し、そういった街で商売をしている店はまだまだ厳しい経営を強いられています。オフィス街で繁盛していたラーメン店が閉店、あるいは客のいる場所へと移転する例が、今後少なからず出てきそうです」(大崎氏)
オフィス街ではないが、新宿・歌舞伎町では6月から7月にかけて新型コロナウイルスのクラスターが多数発生したため、一時は〈あそこへ行くと危ない〉という風潮になってしまった。加えて、22時で閉店すべしという東京都の営業時間短縮要請で、深夜の客に支えられていたラーメン店はとりわけ甚大な痛手を被った。
「9月15日にようやく要請が解除され、前倒ししていた閉店時間を元に戻すラーメン店も出てきてはいますが、それは主に昼型の店の話。客側の意識がすぐに〈深夜まで大丈夫になった、じゃあ食べに行こう〉となるわけではなく、以前のような消費マインドに戻るにはまだ時間がかかるでしょう。つまり深夜帯で売り上げを稼いでいた店は、以前のように遅くまで店を開けていても、同じような数の客が来てくれるとは限らない。人件費や光熱費などの対費用効果を考えれば、コロナ禍で短縮した営業時間をまだしばらく続ける深夜型の店は多いと思いますよ」(大崎氏)
前回の記事「中本、麺屋武蔵、吉村家…ブームを超えて愛され続けるラーメン屋の条件」で、社会情勢の変化に対応できない店は淘汰されてしまうと書いた。ウィズ・コロナ、そしてポスト・コロナの社会情勢下では、テイクアウト、デリバリー、通販といった新業態の開拓に加え、営業場所や営業時間帯をシビアな目で見直せる店だけが、この先を生き残っていけるのかもしれない。