『六角家本店』の破産は「来るべき時が来てしまった」

吉村家』、『本牧家』と並んで横浜家系ラーメン“御三家”のひとつとされた『六角家本店』が、9月4日に破産手続き開始決定を受けた。

同店は1988年創業と家系の中では老舗に属し、94年に新横浜ラーメン博物館へ出店したことを機に、全国的な知名度を獲得。一時は全国規模で直営店を展開し、コンビニとコラボしたカップ麺でもおなじみだった。

7プレミアム 銘店紀行横浜ラーメン 六角家
セブンイレブンなどで展開されている「7プレミアム 銘店紀行横浜ラーメン 六角家」(税込224円)。(写真=セブン&アイHD)

しかし近年、実店舗は本店のみとなり、その本店も2017年10月に閉店。そしてこの度、ブランド管理などを行っていた法人としての六角家にも終止符が打たれたというわけだ(ただし『六角家』を屋号とした別資本経営店や姉妹店は今も健在)。

自称〈日本一ラーメンを食べた男〉として各メディアに登場し、多角的な情報発信を行う『ラーメンデータバンク』の創業者にして現会長の大崎裕史氏は、「17年の実店舗閉店も今回の倒産も、大きな驚きというより『来るべき時が来てしまったか』という印象です」と語る。

「『六角家本店』は、創業店主が高齢のため体調を崩しがちだったことに加え、後継者がいませんでした。その上、すぐ近くに同じ家系の『末廣家』(13年オープン)と『とらきち家』(14年オープン)ができ、新店らしく今風にチューニングされた味や元気なサービスに惹かれた客がそちらに流れたため、全盛期に比べて客数を大きく減らしていました」

時代のトレンドに合わせなければ常連に飽きられてしまう

ただ、近隣での同系列の味の店舗の乱立という点では、横浜家系の元祖である『吉村家』も同じ。しかしそちらは今も変わらず多くの客でにぎわい、名声を保っている。

「『吉村家』の店主も高齢なのですが、まだまだお元気で毎日厨房に入って仕込みを行っているし、彼の下で修業したいという新人もどんどん入ってきていて、店内に活気があります」(大崎氏)

2019年12月に展開された「家系ラーメン総本山 吉村家」とローソンとのコラボ商品。
写真=ローソン
2019年12月に展開された「家系ラーメン総本山 吉村家」とローソンとのコラボ商品。

また『吉村家』は、目に見えないところでの努力や工夫も怠っていないという。

「飲食業界では『変わらないために変わり続ける』とよく言われます。その店の土台となる味は死守しなければいけませんが、時代時代のトレンドに合わせ材料や配合を変えるとか、調理法を見直すとか、少しずつでも変えていかないとやがては常連にも飽きられてしまう。『吉村家』は長年の営業を通し、実は何度も味の見直しを行ってきました。だから周囲に家系の亜流店はもちろん、最近は全国的な有名店の『一風堂』や『天下一品』などもできている過当競争をものともせず、『吉村家』の前には相変わらず客が行列を作っているんです」(大崎氏)

もっとも、常に変わり続けるには欠かせないものがある。

「ラーメン店は厨房の気温が常に高く、朝早くから夜遅くまで立ちっぱなしという過酷な労働条件なので、健康な体の持ち主であることが絶対条件。せっかくお客さんが入っていながら、店主が体を壊したために営業を続けられなくなるというケースが少なくなんですよ」(大崎氏)