『なんでんかんでん』など環状7号線沿いの店はほぼ全滅

全国的に名を馳せた老舗や繁盛店でも閉店の憂き目に遭ってしまう場合、ここまで挙がった

・後継者の不在
・味のマンネリ化
・店主の体調不良

の他にも、

・社会情勢の変化

が原因となる場合がある。

1980年代末から90年代にかけて全国にとんこつラーメンブームを巻き起こした『なんでんかんでん』が、その顕著な例だ。創業社長がテレビ番組『マネーの虎』にレギュラー出演するなど、かつては東京を代表するラーメン店のひとつだったが、2012年に店を畳んでいる(その後2018年に高円寺でFC店として復活後、渋谷に移転)。

夕暮れ時の街
写真=iStock.com/GA161076
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「昔は路上駐車が認められていたので『なんでんかんでん』をはじめとする街道に面したラーメン店が、タクシー運転手や車を持った若者を中心にすごく流行っていたんです。しかし道交法の改正などによって路上駐車の取り締まりがかなり厳しくなり、車で訪れる客が激減してしまうとそうした店は立ち行かなくなります。東京で言えば、30年ほど前に人気を博していた『なんでんかんでん』など環状7号線沿いの店は、そのほとんどが閉店もしくは移転に追い込まれました」(大崎氏)

いまでも東京だけで毎月40~50軒が新規開店している

逆に『ミシュランガイド東京』でラーメン店として初の星を獲得した『Japanese Soba Noodles蔦』は、JR巣鴨駅前という路上駐車とは無縁の繁華街で創業しながら、その後、移転を余儀なくされている。

「ミシュランでの星獲得を機に連日客が大行列を作るようになり、出入り口をふさがれてしまう近隣からの苦情が殺到してしまったのです」(大崎氏)

かつて存在しなかった『ミシュランガイド東京』というグルメ紹介メディアの高評価が、皮肉にも立ち退きという事態を招いてしまったのである。ただし『蔦』の名誉のために書き添えておくが、同店は代々木上原に移転した現在も日本屈指の名店として、連日大盛況だ。

社会におけるメディア状況の変化といえば、インターネットの普及もラーメン店に多大な影響を与えている。

コロナ禍が収束していない現在でも、東京だけで毎月40~50軒のラーメン店がオープンしている。人間は新しいものに惹かれがちな生き物。新店ができれば、とりあえず一度は行ってみようかという気になるものだ。だから既存店も常連客を逃がさないよう戦い続けていかないと、淘汰されてしまう。