ネットでの露出量によって店の経営が左右されてしまう

そうした新店、既存店双方のサバイバルの鍵を握るのが、ネット情報だ。

「ラーメンは手頃な値段で食べられるものだけに、他の料理と比べて愛好者が極端に多いんです。それだけにネットに上がる味の感想や新店情報の数も桁違いで、しかもスマホなどで簡単に読むことができる。今のラーメンファンはそうした情報に左右される傾向が強いですから、ネットでの露出量によって店の経営が軌道に乗ったり揺らいだりしてしまうんです」(大崎氏)

武蔵グループの総本店「創始 麺屋武蔵」のラーメン。
写真=「麺屋武蔵」ウェブサイトより
武蔵グループの総本店「創始 麺屋武蔵」のラーメン。

それでも、ネットが爆発的に普及する2000年ごろより前に評判になっていたところは、客が自分で主体的に選んだ店だという意識も手伝ってか、常連が定着していてなかなか離れないことが多いという。さらに老舗の代表としてガイド本に載る機会も頻繁にあり、人の記憶から消えることがない。

「しかし2000年以降にオープンした店は、次々にできる新店との露出量争いに巻き込まれ、日々苦闘しています。繁盛店であっても、決して気を休めることができないのです。グルメサイトやブログやSNSでラーメン情報が氾濫する前と後とでは、環境ががらりと変わってしまいました」(大崎氏)

『中本』は毎月必ず何らかのテレビ番組に登場している

では、ネット普及後のラーメン業界でも人気を不動のものにしている店は、どんな手法で存在感を示し続けているのだろうか。

「2000年以前(1996年)の創業ですが、都内で複数のグループ店を展開する『麺屋武蔵』は、店舗ごとにメニューを変え、各々の個性を際立たせています。さらに各店で限定メニューを頻繁に提供し、新しい情報の発信も怠りません。また各店の店長は待遇もいいらしいのですが、売り上げが悪くなるとすぐ次の店長に取って代わられるという人材マネジメントで、スタッフを常に切磋琢磨させています。だからこそどのグループ店も味が落ちず、客が絶えないというわけです」(大崎氏)

蒙古タンメン中本はウェブサイトで「からうまラーメン日本一」をうたう。
写真=同店ウェブサイトより
蒙古タンメン中本はウェブサイトで「からうまラーメン日本一」をうたう。

そして、辛いもの好きにとっての楽園であるあの店も。

「『蒙古タンメン中本』は、辛いラーメンのジャンルで今、ほぼ独占状態にありますね。もちろん、辛いだけでなくおいしいというのが最大の理由。辛いもの好きはどの時代にも一定数いるので、辛い上に味わい深い『中本』の信者は絶えることがありません。そして、マスコミを活用するすべに長けていることも見逃せない。私はラーメンというキーワードに引っかかるテレビ番組をすべて自動録画しているのですが、『中本』は毎月必ず何らかの番組に協力し、画面に登場してきます。そうしたPR戦略も実に巧みなんですよ」(大崎)

栄枯盛衰のサイクルが短くなり、人気店でも安泰が約束されていない昨今のラーメン業界。にもかかわらず長く好業績を上げ続けている店は、それぞれ独自の経営戦略を駆使しているようだ。

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