「今回の無罪主張に怒りがひとつになった感じがする」

車の運転は他の車の動きや歩行者の行動を観察し、全体の流れのなかで自分の車を進める必要がある。それができないと、事故を起こす。沙鴎一歩自身、80歳を超えて車を安全に運転できるかと問われると、「できます」と答えられる自信はない。

生活に車が欠かせないという人もいるだろう。しかし飯塚被告は東京都板橋区に住まいがあり、タクシーなどの代替手段もあった。家族はなぜ事故当時88歳での運転を許していたのか。本人も運転免許の自主返納を済ませていればと思う。

テレビでは著名人らが次々と発言した。

10月11日に放送されたフジテレビ系「ワイドナショー」に出演した「ダウンタウン」の松本人志さんは「ぼんやり痛ましい事件やぐらいに思っていた人たちも、今回の無罪主張に怒りがひとつになった感じがします」と話した。

10日放送のテレビ朝日系「週刊ニュースリーダー」でMC(進行役)を務める「TOKIO」の城島茂さんは「ブレーキランプが点灯していないっていう検察による後続車の証言も出ているなかで、車がおかしかったっていうようなこと言っている。車のメーカーもたまったもんじゃない」と語った。

8日放送のフジテレビ系「バイキング」では、コメンテーター役の薬丸裕英さんが「真実は一つしかない。飯塚被告は車に何らかの異常が起きて暴走したと話していましたが、自動車メーカーも警察も検証した結果、自動車には異常はなかったとしています。どうなんでしょうって思います」と飯塚被告の主張を疑問視した。

75歳以上で重い違反歴を持つドライバーに技能検査が義務に

毎日新聞の社説(10月9日付)は「高齢運転者の事故対策 安全への取り組み着実に」という見出しを掲げ、こう指摘する。

「(池袋の)事故をきっかけに今年、道路交通法が改正された。高齢者の運転免許について、新たな制度が始まることになった」
「再来年をめどに、75歳以上で重い違反歴がある人は、免許更新時に実車試験が義務づけられる。合格しないと更新が認められない」

免許更新時の実車試験とは、運転技能検査を指す。同検査の義務化は新たな改正道路交通法に盛り込まれ、今年6月2日に国会で可決・成立した。この改正道交法によってあおり運転罪も創設され、すでに6月30日に施行されている。

運転技能検査は2022年6月までに施行され、免許更新時に車の運転操作をチェックされる。免許更新期限の半年前から何度も受検できるが、合格しないと免許は失効する。合格すれば、さらに認知機能検査と高齢者講習を受け、その後に更新が認められる。

過去に信号無視やスピード違反などを重ねた違反歴があり、運転技能検査に合格しない75歳以上の高齢ドライバーは自ら運転免許証を返納すべきである。本人が「嫌だ」と言っても、家族が返納をうながしてほしい。

自主返納について毎日社説は「昨年、免許証を自主返納した人は60万人を超え、前年より18万人近く増えた。各自治体は、公共交通や各種サービスの割引によって返納を呼びかけている」と書く。