車両の解析ではブレーキを踏んだ形跡は残っていなかった

起訴状によると、飯塚被告はブレーキとアクセルを踏み間違えて時速約96キロまで加速し、2つの交差点に突っ込み、青信号の横断歩道を自転車で渡っていた真菜さんと莉子ちゃんをはねた。検察官は初公判の冒頭陳述で次のように指摘した。

「飯塚被告は当時、助手席に妻を乗せてレストランに向かう途中だった。事故現場の手前で、前を走る車両に追突するのを避けるために車線変更を行い、縁石に接触したが、そのまま加速を続けた」
「飯塚被告の車は2008年の購入以降、半年ごとの定期点検などでアクセルやブレーキに不具合は見つからなかった」
「車に搭載された故障診断装置の解析でも異常は発見されなかった。アクセルを踏み込んでいたことを示すデータが残っていた」
「事故後の車両の解析ではブレーキを踏んだ形跡が残っていなかった」

検察側は、飯塚被告の車のドライブレコーダーにあった映像など60点以上もの証拠を提出している。

本当に車両に致命的な欠陥があったのか

初公判に飯塚被告は弁護士に車いすを押されながら出廷した。罪状認否では車いすから立ち上がり、「事故で奥さまとお嬢さまを亡くした松永さまとご親族に心からおわび申し上げます」と語ったが、「アクセルを踏み続けた記憶はない」と起訴事実を否認。弁護側も「車の走行制御システムに異常が生じて暴走した」と述べ、全面的に争う姿勢を示した。

今後の公判では、被告の過失の有無が焦点となる。次回の公判は12月3日。事故の目撃者に対する尋問が行われる。

アクセルとブレーキを踏み間違えたのか。それとも車両に欠陥があったのか。検察と被告の主張は大きく異なる。検察側の証拠は豊富で、弁護側がどうやって無罪を立証するのかに注目が集まるだろう。

飯塚被告は89歳という高齢だ。一般的に年を重ねれば重ねるほど、運動能力は衰える。飯塚被告は「アクセルを踏み続けた記憶はない」と主張するが、その肝心な記憶力も年とともに落ちる。