思想・芸術部門◎安藤忠雄
芸術文化としての建築の意義を実感
京都賞には、ノーベル賞にはない思想・芸術の部門があります。「人類の未来は、科学の発展と人類の精神的深化のバランスがとれて初めて安定したものになる」という稲盛さんの理念が反映されたもので、京都賞を特徴づける大きな要素の1つだと思います。美術分野の初の受賞者となったイサム・ノグチ氏が、大変喜ばれていたことを今でも覚えています。そんな京都賞を私がいただけると聞いたときは、ただただ驚きしかありませんでした。
受賞自体大変光栄なことでしたが、なにより建築が芸術文化の分野において大きな意義を持っていることを改めて実感し、賞に恥じない仕事をしなければならないという責任感を覚えました。その意識は、その後私の仕事に対する原動力となり、今も変わらず持ち続けています。コロナウイルスの世界的な蔓延によって、人々は今「地球は1つ」であることを痛感させられています。
グローバル化が感染症を世界に拡大させる一方で、この未曽有の事態に対しては、人種を超え国境を越え一丸となって立ち向かわなければならないことも、認識することができました。このようなときだからこそ、京都賞を設立された1984年から、稲盛さんが一貫して「地球は1つ」という理念を持ち、京都から世界に向け発信を続けてこられたことに、改めて感銘を受けています。