理系の基礎研究者が「中国の大学」を考えるように
上海にある復旦大学にて生命科学を研究している服部素之と申します。妻が上海人ということもあり、5年ほど前に上海に引っ越し、それ以来、こちらで研究と教育を続けています。
最近、世界大学ランキングや科学技術論文の質・量のランキングで、中国の大学が存在感を示しており、日本のメディアなどから問い合わせを受けることが増えてきました。本稿では、そのような中国の大学に関する話題の中から、私を含む在中の日本人研究者らからみた「中国の大学における昨今の大学教員採用」についてご紹介できればと思います。
近年日本では、国立大学の法人化や、研究費配分における「選択と集中」などにより、大学における基礎研究者の研究環境が悪化しています。それに伴い、世界における日本のサイエンスの地盤沈下が、ニュースでも報じられるようになってきました。
そんな中、私の研究分野でもアメリカやEU諸国を中心とした海外の研究環境に活路を求める若手・中堅の研究者が、ここ10年以上の流れとして徐々に増えつつあるように思います。とはいえ、5年前であれば、その選択肢として、理系の基礎研究者が「中国の大学」を考えることはなかったように思います。私自身も妻が上海人でなければ現所属へ異動することはおそらくなかったでしょう。
年間10人弱の基礎科学研究者が中国へ渡る
しかし、ここ3~4年、私が上海に異動して以降、徐々に流れが変わってきたように思います。基礎科学分野における「海外の日本人研究者」の圧倒的大多数がアメリカやEU諸国中心というのは以前と同様ですが、それに加えて、若手・中堅を中心に中国における日本人の基礎研究者がわずかではありますが増えつつある印象を受けます。
あくまでざっくりとした印象ですが、私の専門である生命科学分野で年3~4人くらい、物理、天文など、他の基礎科学分野を足しても年10人弱の若手・中堅の日本人の基礎科学研究者が、中国の大学教員として着任しています。
10年ほど前までは、中国の大学に来る日本人の理系研究者というと「定年後のシニア研究者が中国からの留学生だった元教え子(現在中国にて大学教授)に頼まれて客員として短期もしくは数年滞在」みたいなパターンがありましたが、そういうパターンは減少傾向にあるように思います。