京セラ設立から25周年を機に創設されたのが稲盛財団。「人のため、世のために尽くす」という人生観を具現化するために、稲盛氏は約200億円の私財を拠出して、同財団を設立し、京都賞を創設、1985年から顕彰を開始した。

2019年、35周年を迎えた京都賞は、世界的に栄誉ある賞として注目を浴びている。受賞者が、その後ノーベル賞を獲る例も多い。ここに登場する受賞者も、それぞれの分野で活躍する世界の巨星たちばかり。京都賞を設立した稲盛氏の理念をどう受け止めたのか、その想いを聞いた。

基礎科学部門◎本庶 佑

京都賞の原型だった「京都会議」

私のこれまでの研究には、大きく分けて2つの流れがあります。

京都大学特別教授 本庶 佑氏
京都大学特別教授 本庶 佑氏

1つは抗体産生の制御=ワクチンの原理に関する研究と、もう1つはPD-1の阻害によるがん治療の研究です。京都賞は、この両者を含む形で、免疫学の基礎的な研究に対する貢献が評価されての受賞でした。私の記憶では、このように2つのことを包含して賞をいただいたのは、規模の大きな賞では京都賞が初めてだと思います。

私としましては、長年研究しているという意味で、ワクチンの抗体記憶のメカニズムの研究に愛着があります。ワクチンを打つ際に抗原がウイルスに対する記憶を持ち、新しいウイルスが入ってきたときにその記憶によってウイルスを攻撃する。この仕組みの基本的な部分を解明したもので、そこに働いているAIDという酵素を発見したのですが、1975~76年頃から始めて、50年近く研究しているものなので、とても愛着があります。