テロの模様をネットでライブ配信

ドイツの事件ではステファン・バリエット容疑者がタラント容疑者と同じように、ゲーム配信のプラットフォーム「Twitch」を通じて35分のライブ配信を行っていた。そして、エルパソの事件では実行犯のパトリック・クルシウス容疑者が、ヒスパニック系移民の人口増加を“ヒスパニックによるテキサスへの侵略(Hispanic invasion)“と位置付けた。

タラント容疑者も使っていた“侵略”という言葉からは、“白人の世界から非白人を排除する”という強い排斥主義が想像できる。主義主張は違うが、こういった主張はシリア・イラクで領域支配を実現したイスラム国が掲げる二元論的、終末論的な考え方と類似するところが多い。

暴力的白人至上主義者個人によるテロほど大きく報道されているわけではないが、白人至上主義など極右グループの活動は近年、国境の壁を越えて北米や欧州、オセアニアなど欧米世界に拡大している。

 例えば、米国では「アトムワッフェン・ディヴィジョン(Atomwaffen Division)」、南カリフォルニアを拠点とする「ライズ・アバヴ・ムーブメント(Rise Above Movement)」、「アル=カーイダ」の英語直訳と同じ組織名の「ザ・ベース(The Base)」、「国家社会主義運動(National Socialist Movement)」、過激度の低い社交サークル(fratanity group)を自称するが、米国各地で左派との衝突を起こしている「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」などが代表的だ。

さらに英国の「ナショナル・アクション(National Action)」、ウクライナの「アゾフ大隊(Azov Battalion)」、ロシアの「ロシアン・インペリアル・ムーブメント(Russian Imperial Movement)」、北欧の「北欧抵抗運動(Nordic Resistance Movement)」など、各国に同様のグループが存在する。

こうしたグループは国内で活動するだけでなく、インターネットや会員制交流サイト(SNS)を利用して外国のグループと連絡を取り合い、国際的なネットワークを形成している。例えば、アゾフ大隊は軍事訓練のために外国から戦闘員を受け入れており、米ライズ・アバヴ・ムーブメントや英ナショナル・アクションのメンバーが実際にそれに参加している。サンクトペテルブルクでロシアン・インペリアル・ムーブメントのメンバーが主催する軍事訓練を受けた北欧抵抗運動のメンバーが、スウェーデン国内で移民・難民施設を襲撃したテロ事件も報告されている(*2)

また、ロシアン・インペリアル・ムーブメントのメンバーが米国や北欧を訪れ、ザ・ベースや北欧抵抗運動のメンバーと直接会って関係を構築したり、ザ・ベースの指導者がサンクトペテルブルクに滞在したりする状況も報告されている。