コロナ禍で高まる白人至上主義テロのリスク
新型コロナウイルスの感染拡大は、米国を最大被害国にしてしまった。ロックダウンなどさまざまな社会的制限が課されることによって、米国は深刻な経済的打撃を受けることになった。
それによって、白人を中心とする若者たちの社会経済的不満がこれまでになく高まり、白人至上主義組織などが、「新型コロナウイルスによって欧米世界は大規模な被害を受けた。白人の世界をさらに守らないといけない」などと、自らの主義主張を正当化する道具として新型コロナウイルスを利用する恐れが指摘されている。
例えば、米国の国土安全保障省が2月に政府機関向けに配信した文書(*6)によれば、白人至上主義組織はメンバーやシンパに対し、もし新型コロナウイルスに感染した場合、政府機関や非白人の一般市民を対象としたバイオテロを行うことは「義務である」と呼びかけているという。彼らはメッセージアプリ「テレグラム」のチャンネルを通じて、ドアノブやエレベーターのボタンに唾液をつける、警官の顔に唾液をスプレーで吹きかける、非白人の住む住宅街で感染拡大をはかるなど、具体的な手段も提示している。
日本においては、次に誰が大統領になるのか、中国や北朝鮮の脅威がある中で新大統領のもと日米同盟はうまく機能するかなどに注目が集まるが、テロリズム研究の世界で今回ほど懸念が広がる米大統領選挙はこれまでなかった。今後の動向が懸念される。
(*1)“Former counterterrorism chief: Trump defeat may prompt right-wing terror attacks”, Yahoo News, August 19, 2020.
(*2)“These Swedish Nazis Trained In Russia Before Bombing A Center For Asylum Seekers”, BuzzFeed News, July 22, 2017.
(*3)“Designation of the Russian Imperial Movement”;, U.S. Department of State, APRIL 6, 2020
(*4)“IntelBrief: Members of ‘The Base’ Arrested in Maryland, Georgia, and Wisconsin”, The Soufan Center, Jan. 21, 2020
(*5)“U.S. Army Soldier Charged with Terrorism Offenses for Planning Deadly Ambush on Service Members in His Unit”, U.S. Department of Justice, June 22, 2020
(*6)“Federal law enforcement document reveals white supremacists discussed using coronavirus as a bioweapon” Yahoo News, March 22, 2020