あの中国とどう渡り合うのか?
8月30日、チェコのミロシュ・ビストルチル上院議長が率いる代表団が1週間の日程で台湾を訪問した。9月3日には蔡英文総統と会談し、中国からの猛反発を食らっている。
台湾を取り巻く外交関係は、「一つの中国」を国是とする中国により徹底的にその芽を摘まれ、台湾と関わった国家に対しては「中国からの不当ないじめに遭う状況」が恒常的に繰り返されてきた。中国との経済関係を重視する多くの国々は、そうした「面倒」が起こるのを避け、積極的に台湾との交流は行わないとする判断が「世界の認識」だったと言える。
「チェコのような小国が、あの中国とどう渡り合うのか?」
世界中の目はそんな疑いの眼で訪台するチェコの動向を追っていた。しかし、チェコと台湾の間には、「中国への忖度や配慮は不要」といえるほど、「両国」の経済関係が十分に積み上げられていたという。
今回はチェコ代表団の台湾行きが実現した経緯とその背景について論じてみたい。
中国からの圧力を受けていた前議長が突然死
チェコでは、「訪台団実現」までは少なからず紆余曲折があった。
訪台団の派遣構想は2019年9月、ヤロスラフ・クベラ前上院議長がこうした意向を最初に打ち出した。時期は、台湾総統選の後と具体的に言明。これに対し、ゼマン大統領とバビシュ首相はいずれも反対を表明する一方、ペトシーチェク外相は「干渉する意思はない」との立場を明らかにしていた。
しかし、クベラ前議長はその後、中国政府関係者から容赦ない圧力を受ける。ついに、クベラ氏は台湾訪問を前に、こうした圧力やストレスもあったのか心臓発作で突然死した。
その後、前議長が「中国からの圧力を受けていた」と遺した手紙があったことに加え、前議長夫人と娘が圧力を受けていた経緯をテレビ番組で証言。こうした流れに押され、新任のビストルチル議長が4月末、改めて訪台団の実施を発表した。派遣に当たり、議会で是非を問う採決の結果、50対1の賛成圧倒的多数を得て、出発の運びとなった。