チェコ政財界の代表90人から成る訪台団を率いたビストルチル上院議長は、同国の外交儀礼の順位で大統領に次ぐ第2位と位置付けられる。これほどまでの高官が代表団を率いて台湾に向かうことは、中国にとって「国是を揺るがす一大事」と見なされることは間違いない。一方、ビストルチル議長にとっては、志半ばで亡くなったクベラ氏の遺志を抱いての台湾行きとなり、その決意は並大抵のものではなかったことだろう。
中国からの大規模投資が赤字に
中国は2014年から「一帯一路」構想を掲げ、チェコを含む沿線上の各国に巨額の投資を行っていることは周知の通りだ。しかし、チェコ中央銀行の統計によれば、チェコの輸出額のうち、80%はEU加盟各国向けで、対中輸出は財の輸出が1.3%、サービスの輸出は2.3%にとどまる。一方、輸入額で見ると、全体の15%が中国からとなっており、これは主に電子関係の設備、モジュールや部品だという。
チェコ経済界のみならず、国民もが中国への信頼関係を失う象徴的な出来事は、「対チェコ向け直接投資(FDI)の不履行」だったとされる。2016年に習近平主席がチェコを訪問、その際に「950億チェココルナ相当(約4500億円)を同年中に投資、さらに2320億コルナを5年以内に投じる」と約束した。
ところが蓋を開けてみたら、2017~18年の中国からの対チェコ投資はなんと赤字で、チェコからの投資額の方が大きいという結果に終わった。
チェコから見たFDIの流入額割合を見ても、最も依存度が高いのは欧州諸国で95%に達するのに対し、中国からはわずか0.4%にとどまる。
プラハ市長は「投資はほとんど実現していない」と批判
こうした事態について、対中強硬派で、北京との姉妹都市提携を反故にしたプラハ市のフジブ市長は、「中国はチェコで多額の投資をすると約束したが、ほとんど実現していない」と批判。チェコの一部の政治家やメディアが経済的な利益を誇張し、中国に融和的な世論を喚起しているとした上で、「中国がわが国の国内総生産(GDP)に与える影響は1%に満たない」と述べ、親中派勢力の主張を切り捨てた。(時事通信、9月4日)
つまり、約束を破る国とは話をする意義などない、と決めつける格好となっている。
世界を席巻する「中国人インバウンド効果」についても、チェコの訪問客統計を見る限り、同国における中国人客は多くない。ちなみにアジアからの国籍別トップは日本人で、次いで韓国人と続き、中国は3番手に過ぎない。余談だが、韓流ドラマ「プラハの恋人」の大ブレイク以来、韓国人観光客の背中を押しているという。