AGAと診断されたらどのような治療法があるのか
それでは医師にAGAと診断されたらどのような治療法があるのか。延べ50万人のAGA治療実績があるDクリニック東京院長の小林一広医師に治療薬を聞いた。
「国内で発毛効果が承認されている唯一の薬が、ミノキシジル。商品名『スカルプD メディカルミノキ5』(外用発毛剤)などとして親しまれています」
実は医学的に、髪の毛がどれくらい伸びたら「発毛した」と認定するかという明らかな定義はない。そのためミノキシジルに発毛が認められたといっても、患者が求める“フサフサなイメージ”とはほど遠いケースもある。
「私は、ミノキシジルの外用剤より、内服薬であるフィナステリドやデュタステリドのほうが発毛効果が高いと感じています。ミノキシジルの外用剤、内服薬のフィナステリドやデュタステリドなどを単剤ではなく、その人に合わせて組み合わせて使うと、約8割の人に何らかの反応がみられます」(小林医師)
服薬の有無によって「5年後」に大きな差がつく
フィナステリドはもともと前立腺肥大の治療薬として認可され、日本では2005年にAGA治療薬として発売された。日本で行われた治験ではフィナステリドを毎日12カ月間服用した群で脱毛量の減少が明らかであった。
「“現状をキープする薬”と考えるといい」と齊藤医師は言う。
「すごく薄くなった人が元に戻るわけではありませんが、服薬した場合としないのとでは5年後に大きな差がつきます。抜け毛の進行が止まるというのも、十分な薬の効果です」
ここでなぜ薄毛になるのか、というメカニズムを考えてみよう。髪の毛は成長期(4~6年)→退行期(2~3週間)→休止期・脱毛(3カ月)を経て再び成長期に戻るというサイクルを繰り返す。休止期になると毛根の深さが浅くなり、新しい髪の毛に押し出されるようにして髪の毛は抜け落ちていく。
「通常なら『4~6年の成長期』がAGAによって短くなると、毛髪が十分に成長する時間的な余裕がなくなり、毛根も太く深くならないうちに休止期に入り、抜け落ちてしまいます。例えるなら、“定年退職”ではなく“早期退職”。リストラで職を追われるようなものですね。成長が不十分で萎縮した毛根から新たに生えてくる毛は、さらに細く柔らかく短い軟毛に。毛根はみるみる萎縮し、軟毛化が進む悪循環に陥ります」(小林医師)
進行すると、休止期から成長期に移行しない、あるいは新しい毛を生やさなくなる毛根が増え、結果的に軟毛の本数さえも減ってしまうという。