きっかけは「ビジネスプランコンテスト」での受賞

福井では、2004年から福井市主催で「福井発! ビジネスプランコンテスト(以下、「ビジコン」と言う)」が毎年開催されている。当該ビジコンの運営を担っているのは、NPO法人アントレセンター理事長の高原裕一氏だ。2004年の第1回開催から現在に至るまでの17年間で寄せられたビジネスプランは1245件。身近な地域課題を解決するビジネスアイデアが多数を占める。そのうち実際に事業化したビジネスプランは30件だ。ビジコン参加者は年々増加しており、新しいビジネスアイデアの発表の場として、福井になくてはならない存在となっている。

「福井のビジコンのターゲットは、ビジネスアイデアをぼやっと考えている起業以前の人たち。そのため、実際に事業化するケースは非常に少ない。しかし、起業に至らないまでも、”地域課題はビジネスになる”という視点をたくさんの人に持ってもらうべく、裾野を目いっぱい広げるのが福井のビジコンの役割と考え、続けている」と高原氏。

フィッシュパスの西村社長もビジコン出身だ。2015年に、「ヤマメ・イワナが田舎を豊かにする~福井発『ウェルシー・カントリー・モデル』~」というテーマで、グランプリを受賞。その後、本格的に事業化し、フィッシュパスを設立している。

最初は「よくある地域おこしプラン」だった

西村社長からビジコンのエントリーシートを受け取った時のことをよく覚えていると、高原氏はふり返る。

2015年の「福井発! ビジネスプランコンテスト」で西村社長はグランプリを受賞した(写真=筆者提供)

「最初は、IT活用の構想もなく、内容も荒削りで、正直、他のエントリー者とほとんど変わらないくらいの“よくある地域おこしのビジネスプラン”という印象だった。しかし、他のエントリー者と西村さんとの大きな違いは、並外れた行動力とリサーチ力。現場の声をもっと聞いた方がいいとアドバイスすると、すぐに行動に移し現場のニーズを拾ってくる。その都度ビジネスプランをブラッシュアップしていき、その過程で遊漁券の未購入問題という課題を見つけ、遊漁券のオンライン販売という金脈にたどり着いた。数カ月という短期間で、“よくある地域おこしのビジネスプラン”から“筋のいいビジネスモデル”にピボットした行動力は、さすが経営者だと思った」