井戸尋子さんと玉川幸枝さんは4人姉妹の次女と三女。実家は、岐阜県瑞浪市にあるタイル釉薬の製造工場だ。「家業を継ぐ気なんて全然なかった」と言う2人が今、力を合わせて会社を盛り立てているワケとは──。
玉川釉薬の玉川幸枝さん(左)と井戸尋子さん(右)姉妹(写真提供=玉川釉薬)
玉川釉薬の玉川幸枝さん(左)と井戸尋子さん(右)姉妹(写真提供=玉川釉薬)

家業を継ぎ、姉は業界唯一の女性職人に

焼き物の産地として知られる岐阜県東濃地域。井戸尋子さん、玉川幸枝さん姉妹が働く「玉川釉薬」は、ここでタイル釉薬の開発製造を行っている。

釉薬は、タイルや陶磁器の素地をコーティングするうわぐすりで、色や質感の決め手にもなるもの。美しいタイル貼りのキッチンや浴室を、インテリア雑誌などで見たことがある人も多いのではないだろうか。

釉薬職人の尋子さん(写真提供=玉川釉薬)
釉薬職人の尋子さん(写真提供=玉川釉薬)

仕上がりの美しさとは裏腹に、その製造現場には厳しさがともなう。工場内は、冬はマイナス10度、夏は熱気で40度にもなり、釉薬の入ったポリタンクやサンプルのタイルはかなりの重さ。タイルメーカーが要望する色をきっちりと出す「色合わせ」にも高い技術が必要なため、職人には体力と技術の両方が求められることになる。

姉の尋子さんは、そうした厳しい職場で、父親の後を継ぐ釉薬職人として活躍中だ。当初は「力仕事だから女性には無理」と言われたが、もともと負けず嫌いな性格。周囲も驚く頑張りぶりで、地元の釉薬業界では最も若く、かつ唯一の女性職人に成長した。