伊藤園系のタリーズは茶系飲料に強みあり

一方、9月2日からタリーズが販売している期間限定ドリンクは2種類ある。「宇治抹茶フルーツティー ペア&アップル」(ホット/アイス。ショートサイズは430円)と「ほうじ茶リスタ」(アイスのみ。同560円)だ。

前者は、毎年人気の抹茶を使ったドリンクに、今回初めてフルーツ=洋梨を組み合わせ、果肉入りアップルソースでトッピングした。後者はダブルに焙煎したほうじ茶を使った濃厚なシェイクだ。トッピングのクーベルチュールチョコレートも楽しめる。

写真提供=タリーズコーヒー ジャパン
タリーズの「宇治抹茶フルーツティー ぺア&アップル」

「茶葉をそのまま挽いて粉末にしているので、お茶本来の風味と香りが楽しめます。他社はお茶を異文化と融合させる『フュージョン系』に力を入れますが、うちは愚直に、あくまで素材にこだわって勝負します」と、マーケティング本部マーケティング第二グループ グループ長の工藤和幸氏は自信を示す。

タリーズは「お~いお茶」で知られる伊藤園のグループ会社だ。茶系には強みがある。

「茶系に本腰を入れ始めたのが2013年に伊藤園から本間代子のりこが来て、製品開発の専門チームを立ち上げてからです。本間は日本茶、中国の茶芸師、英国の紅茶協会の資格など公的制度の資格も取得した“お茶のプロ”で、茶葉を提供する生産地を探すことから始め、年々、茶系の味を深めていきました。近年のタリーズは、コーヒー系よりも紅茶系商品の伸びのほうが高いほどです」(広報担当者)

専門店として2017年から「タリーズコーヒー &TEA」という業態も始め、現在11店を展開する(2020年9月現在)。一方、伊藤園には「オチャルーム アシタ イトウエン(ocha room ashita ITOEN)」という高価格の店がある。タリーズを取材してきた筆者としては、上質感を伊藤園に任せ、タリーズは「身近さ」を訴求したほうが強みになると感じる。

写真提供=タリーズコーヒー ジャパン
タリーズの「ほうじ茶リスタ」

上質な「ティーサロン」が減った理由

なぜ「身近さ」がポイントになるのか。その理由は茶系の歴史を紐解くとよく分かるだろう。昭和から平成の途中まで、喫茶店に来る女性客は総じてコーヒーよりも紅茶を好んだ。「紅茶のおいしい喫茶店」というフレーズで始まる歌も流行ったほどだ(柏原芳恵「ハロー・グッバイ」1981年)。

この曲がヒットした昭和56年は、喫茶店(カフェも含む)の国内店舗数が15万4630店と、調査史上最も多かった年だ(総務省統計局「事業所統計調査報告書」を基にした全日本コーヒー協会の発表データ)。それが現在は7万店を割り、ティーサロンも減った。