「おまえのイビキがうるさい!」「そっちこそうるさい!」
さらに専業主婦のD恵さん(51歳)の話をしておこう。彼女はコロナ禍になってから、寝る部屋を変え、夫とは別に眠るようにしたという。
なんでも、夫から「おまえのイビキがうるさい!」と言われたことに端を発するらしい。
「そう言われた瞬間、張りつめていた糸が切れたっていう感じ」とD恵さん。
「コロナの前から夫のイビキもうるさいのよ。でも、私はずっと我慢してた。それなのに、夫は私が眠っていようがお構いなしに、深夜に帰宅するなり電気を点けるなんてことは当たり前。寝室のテレビも自分の好き勝手に見る。そのくせ、私が就寝前に本を読もうとすると『俺、寝るから電気消して。読むなら、リビングに行って』と。
そんなこんなが思い出されて、私はいろんなことを我慢してきたんだなと気付かされたの。
もういっか、子供も育ち上がった今、私は何の努力をしているんだろう? 夫に合わせて我慢する必要があるのかな? ってね」
それで、とりあえず寝室を別にすることにしたそうだ。
「夫婦は部屋を同じにするべしというのは、自分の勝手な思い込みだったんだよね。今はすごく快適。熟睡できるし。夫は(寝室を別にして)ビックリしてたけどね」とD恵さんは笑顔で語る。
「今まで、夫に文句があっても言えなかったのは、言ったときに『なんで?』と言われ、『やめてほしい』という気持ちが分かってもらえなかった時の、自分の気持ちを考えると、それすらもめんどうになるから言葉をのみ込んできた気がするの。でも、もうやめる。夫のことは嫌いではないから、今後は我慢しないで、思ったことは伝えようって決めたよ!」
「卒婚」に肯定的なのは40~64歳の男性5~6割、女性7~8割
世の中には、定年後に「卒婚」を希望する夫婦が増えている。明治安田生命が40~64歳に聞いた調査では、卒婚(離婚はしないが、配偶者に必要以上に干渉せずに自分のライフスタイルを楽しむ夫婦関係を営むこと)に肯定的な割合は、男性5~6割、女性7~8割だった。
このコロナで家庭内卒婚を選択する夫婦が急増している、と私は確信している。
先述の医師ではないが、夫婦の距離が近くなり過ぎて、それがつらいなら、一つ屋根の下であっても適度な夫婦ディスタンスをとることは正解かもしれない。共に築き上げた「夫婦のタワー」がもろくも崩れるなど、本当に一瞬で簡単なことなのだから。