一時的な「発熱外来」の設置だけでは不十分

さらに調剤薬局についても、建物の構造上、動線分離できない施設では、非感染性疾患のみ扱うか感染性疾患のみ扱うかを明確化して、地域で両者のバランスをとりつつ分担を決めておくことが望まれる。薬局の待合室にも十分に感染リスクがあるからだ。

今までは自由開業制のもと、一戸建てやビル診など建物の構造上の違いに関係なく、標榜科も診療内容も自由に決められてきたわけだが、今後はこれまでの常識を転換して、医療提供体制を抜本的に見直していかねばならないだろう。仮にCOVID-19が“普通のカゼ”としてそれほどの脅威を及ぼすことなく、私たちの生活の中になじんでいく日が将来的に来ることがあっても、いつまた新興感染症が上陸して来るとも限らない。

その時に、感染してしまった人もそうでない人も、いかなる患者さんも行き場を失わないような医療体制を構築しておくことが重要だ。その意味では、この機に一時的な「発熱外来」の設置だけではなく、ポストコロナの恒久的体制として「感染症専門診療所」を全国に多数設置していくことを検討しても良いのではなかろうか。

医療政策と診療体制をゼロベースから見直す必要がある

確かに「かかりつけ医」という、カゼのお孫さんから高血圧のおばあちゃんまで、家族全体を一人で診療できるホームドクターの存在は重要であるし、今後も増えていくことが望まれるが、その一方で、COVID-19という、無症状であったりカゼと区別のつかない症状から、重症化すれば死に至ることもある多彩な症状を呈する新興感染症が全国的に広まってしまった今、これまでの医療政策と診療体制を、ゼロベースで見直さなければならなくなったと言っても過言ではない。

そもそもカゼやインフルエンザの患者さんと一緒に、血圧や糖尿病、喘息の定期処方の患者さんが、“完全に分離”されることなく診察を待つという、これまでの待合室の風景こそが、異常だったのではないだろうか。

このコロナ禍を奇貨として、診療所等初期診療を担う医療機関のあり方について、行政、医療機関そしてユーザーである患者さんらが知恵と意見を出し合い、抜本的に改革していくことが望まれる。

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