地デジ化以降、フジテレビが重大な不振に陥る

だが地デジ化以降、各局の明暗ははっきり分かれた。日本テレビは変わらず好調だが、テレビ朝日も2012年にプライムタイム視聴率1位に輝くなど、躍進を見せている。一方、1980~90年代にかけて視聴率トップを独走したフジテレビは重大な不振に陥っており、今やテレビ東京に迫られるまでになった。

佐藤健太郎『番号は謎』(新潮新書)

フジテレビの不調については多くの分析がなされ、体質の変化や社屋移転などが原因として挙げられている。しかし、チャンネル番号が関東キー局中で最後尾になったから、という一見単純な指摘にも、なかなか見逃せぬものがあると思える。

地デジ化以前、フジテレビの番号は関東の主要7局中5番目にあり、新聞などの番組表でも中央やや右寄りの目につきやすい位置にあった。しかし地デジ化によってフジテレビは番組表の右端に追いやられ、目に入りにくくなってしまった。チャンネルを1から順に切り替えて面白そうな番組を探す際にも、8チャンネルにたどり着く前に手前でストップしてしまうことが多くなる。自分のテレビ視聴習慣を省みると、これは確かに影響がありそうだと思えてくる。

数字ひとつで命運が左右されることも

実際、フジテレビの凋落は、地デジ化がほぼ完了した2011年から顕著になっており、番号の若返ったテレビ朝日の躍進はこれと同時期だ。これらを考え合わせれば、チャンネル番号変更は少なくとも、視聴率変動の要因のひとつにはなっていると思える。もしフジテレビが、空いていた3チャンネルに乗り換えていれば事態は違っていたかもしれないが、これは後知恵というものだろう。

チャンネル番号などに左右されない、圧倒的に面白い番組を作ればよいだけだ──といってしまえば、もちろんそれまでではある。しかし、たかが数字の大小ひとつで巨大企業の命運が左右されてしまうというのが、番号の持つ怖さであるには違いない。

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