「コンドルセの陪審定理」の応用

この点についての最も優れた説明は、フランスの数学者にして社会学者のコンドルセ侯爵によるものだ。コンドルセは1785年に、今では「コンドルセの陪審定理」と呼ばれている命題の中で、単純な計算を示した。この定理は、どのような場合に集団の意見に頼るべきかを知りたい人にとって、今なお多くの知見を与えてくれるものである。また、「みんなの意見」は、常に専門家の意見より正しいと思っている人にとっては、注意を促してくれるものだ。

この定理の概要を理解するために、まず、多数の人が同じ質問に答えようとしていると仮定してみよう。さらに、その質問には「正しい答え」と「そうでない答え」の2通りの答えがあり、個々人が正しい答えを選ぶ確率は50%を超えていると仮定しよう。わずかばかりの計算をしてみれば、その集団の過半数が正しい答えを選ぶ確率は、集団の規模が大きくなるにつれてどんどん100%に近づくということが証明されている。

つまり、正しい答えを選ぶ確率は、集団のほうが個人より高く、大きい集団のほうが小さい集団より高いということになるわけだ。

ただし、そのためには2つの条件が満たされていなければならない。ひとつは過半数の判断が「勝利する」こと、言い換えれば、多数決が前提となっていることで、もうひとつは、個々人が正しい答えを選ぶ確率が50%を超えていることだ。

社会科学者たちはコンドルセの定理を、選べる答えが3つ以上ある質問にも拡大して応用してきた。人々──労働者、経営者、顧客──が間違った答えのいずれでもなく正しい答えを選ぶ確率が50%を超えているとしたら、その場合、集団の規模が十分に大きければ、相対多数の答えはきわめて高い確率で正しいのである。