「バカだからあんな行動をとるのだ」という思い込み

さらに、世の中にバカがたくさんいると感じる理由がもうひとつある。ある研究結果によると、わたしたち人間は〈根本的な帰属の誤り〉〔他人の行動を判断するのにその人の気質や性格を重視しすぎること〕に陥りやすいという。ある人が行なった言動は、本人の性格によるものだとして、その時の状況などの外的要因があるとは考えない。そして多くの場合、きっぱりとこう断言する。

「あいつはバカだ」

ジャン=フランソワ・マルミオン編、田中裕子訳『「バカ」の研究』(亜紀書房)

だから、猛スピードで追い越していった車を見て「あの運転手はバカだ」と思い、学校で大ケガをした子どもを慌てて迎えにいくのだとは考えない。二時間経ってもラインの返信がない友人に対して「何を怒ってるんだろう」と思い、電波が届かないところにいるとは考えない。部下が資料を提出しないと「あいつ、怠けやがって」と思い、部下が膨大な仕事を抱えて身動きができないとは考えない。自分の問いかけに対して教師の返事がそっけないと「この先公はバカだ」と思い、自分の質問がくだらなかったとは考えない。

このメカニズムのせいで、わたしたちは「この世の中はバカばかりだ」と思いこんでしまうのだ。

以上のように、世の中にバカがたくさんいるとわたしたちが思いこむ原因は、少なくともふたつはあるのだ。

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