日雇い派遣で働きマクドナルドで寝起き

「マクドナルドはWi-Fiも使えるし、充電もできる。日中はここに座って、携帯電話で日雇いバイトを検索します。年収は、頑張っても110万円ぐらいでしょうか。時給が高い深夜の日雇い仕事を入れたいんですけど、なかなか巡り合えなくて。仕事のない夜は、24時間営業の店で100円バーガーと水だけで過ごします」

日雇いバイトの内容は多岐にわたっており、都内であればイベント会場の警備から菓子の袋詰めまでさまざまだ。しかし、うつ病を抱えコミュニケーション能力に自信のない平田さんは、女性や若者の多い職場を避けていて、選択肢が少ない。棚卸しや梱包、警備といった職種を狙って応募を続けている。

「でも、贅沢は言ってられませんよね。女性が多そうな仕事に行くときは、コインランドリーに併設されるシャワーで、溜まった汚れを落とすように気をつけています。家がないと知られたくないですし、衣服が汚れすぎているとマクドナルドにも居づらいですからね」

当初は、せっかく上京したのだからと渋谷センター街の店で寝起きしていたが、ここも、うつ思考のため移動を迫られることになる。

「早朝、机に突っ伏して寝ていると『大丈夫ですか?』と声をかけてくるボランティアがいるんですよ。僕は初対面で身の上話なんてできないから、気安く確認してほしくない。ああいうの、疲れるから苦手なんです」

そこで、渋谷に比べて比較的穏やかな下北沢のマクドナルドを“定宿”にした。しかし、平田さんのほかにも店内で寝泊まりする難民客が増えたせいか、半年前、深夜は寝転がる広さのシート席に座れないように変更になったという。

「マック難民への目は厳しくなっていて、ほかの店舗でも次々と24時間営業を中止しています。横になると店員に起こされるから、寝るときはリュックを枕代わりに座ったまま寝たりします。おかげで、首も肩もボロボロです」

「足を伸ばして眠れることがどれだけありがたいことだったか」

吉川ばんび、週刊SPA!取材班『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-』(扶桑社新書)

心身の消耗が激しい平田さんに生活保護など行政に頼る方法を提案すると、冷めた瞳でため息をつき、「何度か申請には行ったんですよ」と打ち明ける。

「生活保護を申請しても、親類を頼れといって門前払いです。前職の給与は基本給が低かったため、失業保険もすずめの涙。失業してからこの状況に落ちてくるまでの間、どこかでひっかかることのできるセーフティネットがあれば頼りたかった。俺だって就職したい気持ちはある。でも、状況的にできないんですよ。最近は日雇い仕事にもありつけていない。『足を伸ばして眠れる』ことがどれだけありがたいことだったか、身に染みています」

絶体絶命のサバイバル生活。平田さんは今日も、断崖絶壁の上を歩き続けている。

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