別居婚のメリットは「自由の確保」

メリットはなんといっても「自分の自由が確保できること」だろう。

「つきあって5年。私は結婚しなくてもいいと思っていたんですが、彼は結婚したいという。『社会的に認められた家族がほしい』と。ただ、私は看護師で夜勤もあるし生活時間が不規則。彼は会社員でそれほど残業もない。今までの生活スタイルを変えると仕事に支障が出るため、話し合って、今まで通り、それぞれひとり暮らしをしていこうということになりました。彼が私の自宅から歩いて5分ほどのところに引っ越してきてくれて。私のシフトに合わせて一緒に過ごす時間を決めるという感じ。生活を変えず、彼という精神的に助けになる存在ができたことはありがたいと思っています。彼も結婚したことで、より充実した日々になったと言ってくれています」(35歳・結婚2年)

「20代で結婚した友人たちから、夫の世話が大変、子どもができたら夫が子どもより聞き分けのない存在になったなどと聞かされていました。うちの姉も離婚しているし、結婚にはまったく期待していなかった。彼とは友だち関係が長くて、『一般論として別居結婚っていいよね』なんていう話もしていました。

それからあれこれあって結婚したんですが、その直後に彼が転勤、単身赴任で結婚生活が始まりました。3年後、彼が帰ってきたけど、彼は借り上げの社宅でひとり暮らし。週末は彼が私の自宅にやってくるというスタイルです。彼も私もひとりでいることが好きなんですよね。他人と過ごすのは週一くらいがちょうどいい。だから結婚して5年たちますが、今も新鮮な関係です」(33歳)

時間的にも物理的にも精神的にも、個人の自由と尊厳が確保される。そのことを話し合って別居結婚を選ぶカップルが多いようだ。一方が、「ひとりでいるのが好き」、もう一夫が「ずっと一緒にいるのが好き」と、人に対する距離感への価値観があまりに異なる場合は、うまくいかない可能性が高い。結婚=同居と考えている人にとっても、別居婚はむずかしい。

子どもができたとき別居婚夫婦はどうしたか

デメリットとしては、経済的な問題が一番大きい。それぞれに家賃や光熱費がかかるのだから当然だ。「個」としての自由と経済的損失を、どう天秤にかけるのか、それぞれのカップルのありようだと思う。

他人の噂、世間体などもデメリットになるかもしれない。

そして、なにより子どもができたときに心が揺れるようだ。別居婚のベテランであるハルカさん(仮名=以下同・46歳)は結婚して14年、11歳のひとり娘がいる。妊娠したとき、夫はがらりと変わって、同居をさかんに口にするようになった。

「私はずっと働くつもりだったから、30歳で1LDKのマンションを買ったんです。家族では住めないけど、私と娘ふたりだけなら住める。夫は家を売れと言ったけど、私のお城ですから売る気はありませんでした。それに子どもが生まれるからって、どうして同居にこだわるのかわからなかった。お互いを尊重するために別居ということになっていたのに」

何度も何度も話し合った。結論が出ないまま、彼女は出産。いざとなったら離婚も視野に入れていたという。そして彼女は、近所の子育て中のママや、元保育士の友人やベビーシッターなど多くの人たちの協力体制を築いていく。

現在も、夫はすぐ近くに住み、娘は行ったり来たりしている。

「同居していれば今より便利だったかというと、そんなこともないような気がするんです。週末はだいたい3人で一緒に過ごしていますし、夫が家で作った料理を冷凍して持ってきてくれることもあるし。そんな生活だと娘が落ち着かない子になると義母に言われたこともありますが、自由でいるメリットのほうが大きいんじゃないかと私は思っています」

母がぶれなければ子どももぶれないと彼女は信じている。デメリットを考えて怯えるようではダメなのよ、と彼女は大きく笑った。