結婚しても別々に住む「別居婚」が注目されている。男女関係や不倫について20年以上取材を続けるフリーライターの亀山早苗氏は、「女性の社会進出が進んだことで、個々人の自由が確保できる別居婚を選ぶ夫婦が現れ始めた」という——。
アパートメントのエントランス
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「個」を意識する人たちが増えている

「婚姻届を出して同居する」のが一般的な結婚の形ではあるが、ここ10年くらいの間に、さまざまな結婚の形を選択するカップルが増えてきた。婚姻届を出さない事実婚カップルが典型的な例だろう。背景には別姓を選択できないこと、婚姻届を出すメリットが感じられないことなどがある。事実婚の方法も、公正証書で証明する事実婚、住民票に「妻(未届)」と記載するカップルなどさまざまだ。

中でも最近、よく聞くのが「別居婚」だ。これには2通りある。ひとつは結婚する若い世代が最初から別居を選ぶ、もうひとつは子どもが巣立った熟年夫婦が縁婚はせずに別居を選ぶこと。いずれも、これからの時代の夫婦の新しいパートナーシップのように思う。

かつては、結婚=同居だったが、今の時代はそうではなくなった。これはやはり女性の社会進出が進み、「個」を意識する人たちが増えているからではないだろうか。そもそも、「ひとり扶持ぶちは食えなくてもふたり扶持は食える」と昔から言うように、「結婚」はかつてはあくまでも男女が少しでも便利に、そして経費を節約しながら生活していくための方策だった。男は稼ぎ、女は家事や子育てをする。分業することで一家をなしていくのが当然の時代が長かった。富国強兵の時代には、子だくさんが奨励された。

ところが今は人の意識が大きく変化してきた。一家に一台の電話がひとり一台になったことに象徴されるように、「個」の時代なのだ。都会は老いも若きもひとり暮らしであふれている。デパ地下もコンビニも、「個食」を前面に売り出している。