28年前のリベンジを果たす

【清水】そうなんです。前置詞に「at」を取る動詞を全部まとめて例文を載せるようなプリントなのですが、たとえば「aim at(~に狙いをつける)」という熟語であれば、「a」をダーツの的になぞらえて描き、この横に「t」と書いて、それに向けて矢を放つようなイラストをつけたんですね。それだけで「at」が「どこか一点に集中する」というイメージであることが一目瞭然になります。そういうことを妻と相談しながらつくっていきました。

【三宅】それが生徒さんに圧倒的にウケた。

【清水】はい。実はもっとウケが良かったのは同僚の先生で、1年分くらい溜まったプリントを見て、「これは本になる。絶対世の中のためになるから、出版社に相談してみたら?」と言われたのです。

【三宅】では、ご自分から売り込まれたのですね。

【清水】ええ。大手出版社を含め何社かを回って企画を説明したところ、日栄社という国語と英語の問題集を専門に作っている出版社の編集の方の目に留まり、初めて本を出すことができました。『パワフル英熟語1000』という本で、4万部くらい売れました。

【三宅】処女作で4万部とはすごい

【清水】しかし、そのときもやはりコストの問題で、すべての熟語にイラストをつけることは叶わなかったのです。イラストは所々にあるくらいで、基本的な前置詞を頭に入れてから熟語を覚えていくというオーソドックスなパターンの本になりました。

【三宅】元の教材の劣化版をつくらざるを得ないというのも、少しつらい話ですね。

【清水】そうなんです。今年6月に「語源図鑑」シリーズの第3弾として、『英熟語図鑑』を出したのですが、実はこの本こそ、私が本を書き始めてからずっと構想していたものなのです。すべての熟語にイラストが入っています。今回もイラスト原案を担当していただいたすずきさんには相当頑張っていただきましたけど、私の28年分の思いが詰まった一冊です。

英語学習を少しでも楽しく、効率よく

【三宅】面白いですね。爆発的に売れたのは「語源」でしたが、本来出したかったのは「熟語」だったわけですね。両者のすみ分けはどうお考えなのですか?

【清水】用途で変わります。『英単語の語源図鑑』は、少し難しい単語も取り上げて、試験勉強をする人や、英語のニュースを読んだり聞いたりしたい人に向けて最適化されています。

【三宅】それは少し感じました。見た目はとっつきやすいですが、載っている単語の難易度が少し高めですね。

【清水】そうです。だから『英単語の語源図鑑』の購買データを見ても、ビジネスパーソンに人気が高いのです。一方の『英熟語図鑑』は、ネイティブが日常的に使う句動詞を主に取り上げるようにして、英会話力を上げたい人向けに最適化しています。ですから、イーオンで学ぶ生徒さんには、おそらく『英熟語図鑑』のほうが訴えるものがあるのではないかと思っています。

【三宅】先生のお話を聞いていると、「英語学習を少しでも楽しく、そして効率よくしてあげたい」という、親心のようなものを感じます。

【清水】それはやはり、長年高校でいろいろな生徒をみてきたからだと思います。自ら進んでスクールに通う子とは違って、学校には英語自体にまったく興味がない生徒がたくさんいます。そんな子たちに振り向いてもらうためにどれだけ知恵を絞れるか。それが学校の先生に求められる役割だと思うのです。

撮影=原貴彦
英語教材開発者の清水建二氏(左)とイーオン社長の三宅義和氏(右)
(構成=郷 和貴)
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