「12年なら中国の反日暴動、16年ならブレグジットを巡る英国での国民投票のように、毎年世界経済に混乱が生まれる事件は起きているんです。そして、そのたびに日経平均は影響を受けます。重要なのは、その事件が実際に日本経済に影響を及ぼすかは関係なく、混乱する“ネタ”が発生するだけにもかかわらず、チャートは動くということです。

だって、中国で日本車一台がひっくり返ったからといって、日本企業が経済的な打撃を直接受けるわけじゃないですよね(笑)。にもかかわらず、株価は動く。そして、その下がり幅は毎年規則があり、おおむね下がり値は16%前後でストップします。私の中ではそれから5日間下がらなければ、その日が底値と判断します」

コロナは正直関係なかった

高橋さんの“持論”を証明するようにコロナ禍中の日経平均の動きを振り返ってみよう。

「20年2月に日経平均が年初来高値の2万4000円台から16%下がり、2万円台に入った時期がありました。ここで底値かと思いましたが、それから5日以内でさらに下がり、ようやく下げ止まりの傾向を見せたのが1万6000円にまで下がった20年3月中旬日でした。

私の基準では16%以上の下がり幅は常に“買い”ですから、19%も下がったこのタイミングで日本ETFを買いました。1万6500円で買い、2万1000円まで上がったタイミングで利確したという流れですね」

つまり、「コロナだから」という理由でいたずらに銘柄を買うことはしなかったと高橋さん。

「見ていたのはチャートだけ。年に1度必ず訪れる“16%の値落ち”のタイミングで買いを入れて、あとは回復のタイミングで売るだけ。こんなの、サルでもできますよ」

高橋さんのような元手が多いベテラントレーダーでなくとも、コロナ禍でも大儲けした投資家は存在する。

「私も、事業内容はあまり見ず、銘柄のチャートだけを見てコロナ禍の1カ月弱で150万円の儲けが出ました」

会社員で投資歴1年半の伊藤大地さん(31歳・仮名)は、王子ホールディングス、楽天、日経ダブルインバース上場投信(ETF)の3銘柄でコロナバブルの恩恵を受けている。

「具体的に売買した時期は、20年2月下旬から20年3月上旬までです。銘柄を見ると、ECに強い楽天など、コロナ銘柄と思いがちですが、私が見たのはチャートの動きだけです。日経ダブルインバースは、日経平均と逆の動きをするなどとも言われています。売買した時期は日経平均が17%下がったのに連動するように17%上がりました。私も自分なりにルールを設けて、感情に流されずに売買した結果、350万円の元手がたった1カ月で500万円まで膨れ上がりました」