サッカーとポルトガル語の勉強に明け暮れた毎日

【三宅】そうでしたか。しかし、ブラジルはポルトガル語が公用語です。プロではないので通訳もいないでしょう。事前に勉強されて行かれたのですか?

撮影=原貴彦
イーオン社長の三宅義和氏

【中澤】「行けば何とかなるだろう」と甘く考えていたので、日本では勉強を一切していませんでした。しかし、現地に行ってすぐに後悔しました。最初の3カ月は本当に地獄でしたね。身振り手振りと、常備していた辞書でなんとか乗り切った感じです。

【三宅】段々と使えるようになっていくものですか。

【中澤】はい。まず耳が慣れてきて、その後、少しずつ話すことができるようになっていきました。頭でごちゃごちゃ考えずとも、言葉が自然に出て来るようになったのは、半年過ぎてからぐらいですかね。

【三宅】かなり早いほうですよね?

【中澤】そうかもしれません。僕にとって運がよかったのは、当時はインターネット環境がなかったことです。日本語を使いたいと思っても、その機会がなかったので、ひたすらサッカーの練習とポルトガル語の勉強に明け暮れました。

近所の子供たちは超優しい先生だった

【三宅】言語習得のため、なにか毎日実践されたことはありますか?

【中澤】耳を慣れさせるために、寮にいるときはずっとテレビをつけっぱなしにしていました。ニュースとか、それこそスポーツ中継ですね。それをひたすら聴き続ける。

実は、一番効果的だったと思うトレーニングは、寮の近所に住んでいた子供たちとの会話です。

【三宅】素晴らしい! 日本の英語教育は机上のものになりやすいですが、話す前提で学んでいくと、吸収効率が違いますからね。

【中澤】そうですね。しかも相手が子供だったのがよかったと思います。というのも、子供たちは僕が間違ったポルトガル語を使っても決してバカにしません。「違う違う。こうだよ」と丁寧に教えてくれるのです。

【三宅】それは優しい。

【中澤】超優しい先生なんです。英語も同じだと思いますが、「上手に話せないと格好悪い」とか「間違えるのが恥ずかしいから話せない」と思って、実践をためらっている方は多いはずです。でも、子供たちが相手ならその心配はいりません。

それに、子供ですからテレビのように早口ではないですし、チームメイトが使うような汚い言葉も一切使わない。言語の初学者にとって、現地の子供たちは最高の教材なんだなと思いました。