ハングリー精神が旺盛なブラジル人サッカー選手たち

【三宅】日本とブラジルのサッカーの違いについてお聞きしたいのですが、なぜブラジルはサッカーが強いのですか。

【中澤】ひとつは、やはりハングリー精神が大きいと思います。今はどうなのかわからないですが、「プロになって家族に良い暮らしをさせる」というのが当時の若いサッカー選手たちが口を揃えて掲げる夢でした。

【三宅】それはモチベーションが強い。

【中澤】強いです。自分が頑張らないと家族が貧困から抜け出せない。だからチームメイトの怪我は自分にとってのチャンスですし、ラフプレーで相手を怪我させても、それでチームに貢献して自分がレギュラーになって目立てば、家族が良い暮らしをできる。そういう気持ちでやっているプレーヤーがほとんどでした。

【三宅】日本だと、そこまで露骨に表には出しませんからね。

【中澤】日本で「お金のためなら何でもやる」というと、「お前は守銭奴か」みたいに非難されたり嘲笑されたりしますが、ブラジルではそれが当たり前です。

元サッカー日本代表の中澤佑二氏
撮影=原貴彦

外国の選手は衝突するが、根にもたない

【三宅】そうなると、チーム内の競争も激しいわけですか? 団体スポーツだとレギュラー争いがつきものですが。

【中澤】すぐに喧嘩しますよ(笑)。練習中でもしょっちゅう言い合いとか、場合によっては殴り合いをしています。ただ、面白いのは練習が終わると、さっきまで喧嘩していた選手たちが仲良くしているんです。スイッチのオンオフがちゃんとできている。

【三宅】日本人は感情的になって引きずりやすいですよね。

【中澤】日本だと、「あいつ、今日削ってきやがって。絶対に許さねえ」みたいなことを、プライベートの場面になっても、ねちねち言い続ける選手もいます。最近は海外のコーチが増えて、「自分が出るためには、多少激しくてもいい」という教えが広まった影響で、昔ほどギスギスしなくなったと感じますが。