ネットよりも読書時間を増やす

——長いおうち時間だからこそ、おすすめの過ごし方は何でしょう?

【山口】やはり読書です。わたし自身、本がとても好きな子供でした。

【中野】わたしも友達と遊ぶより、一人で本を読んでいるほうが好きでした。よく「子供が本を読もうとしない」という悩みを聞きますが、本好きになるかどうかは、親に本を読む習慣があるかどうかがとても大きいですね。子供に本を読んでほしければ、まずは親が本を読んでいる姿を見せることです。

【山口】わたしが本好きになったのは、幼い頃、母に絵本の読み聞かせをしてもらったおかげ。両親とも本好きで、休みの日は家族みんなが無言でそれぞれ好きな本を読む時間もあったくらい。

【中野】実は、そうした家庭って決して多くはないんですよね。そもそも、本を読む人って少ないんですよ。本は、どんなに売れても100万部の世界。ときどき数百万部が売れるベストセラーが生まれるけれど、それは普段本を読まない人が買っているからそうなるわけで。つねに本を読む人の数が100万人だとしたら、日本の人口の1%にも満たないんです。つまり、本を読む習慣のある人は、知識を身につけるうえでとても大きなアドバンテージを持てることになるんですよね。

【山口】本は読まないけれど、ネットに触れる時間が長いっていう人は結構いますよね。ネットは手軽だけど、枝葉ばかりでなかなか幹の部分を得られない。自分の好きな情報だけしか見ようとしないから。本を読む習慣が身についていない人は、読書を面倒だと感じるかもしれないけれど、読めば読むほど楽に、そして速く読めるようになるから、ぜひ読書習慣を身につけてほしいですね。

——子供が読む本の選び方について親に助言できることはありますか?

山口真由さん(撮影=榎本壯三)

【山口】わたしは“放流”方式がおすすめ。図書館や書店に連れていって、自分で好きに選ばせればいいと思います。親が介入しないほうがいい。

【中野】そうですね。そして親は、自分が選ばないような本を、決して否定しないこと、子供から取り上げないこと。もちろん、多くの親が読ませたがる古今東西の名作は大事ですよ。名作といわれるだけの内容がそこにはありますから。けれど、ほかにもよい本がたくさんあるんです。読んだことのない親に、その良しあしは判断できません。

【山口】たとえば暴力表現のある本を読んだからといって、その子が暴力的になるわけではない。それは、自分自身を振り返ってみてもそう思います。むしろ、大人の読んでいる本を通じて、世の中の真実の一端を垣間見られました。わたしは、親の本棚の本を勝手に読んでいたんですが、父の好きなスパイ小説に夢中になりました。

【中野】善悪を理解できる年齢になったら、いろいろな表現に触れてみたほうがいい。きれいごとや建前にしばられない、自由な世界を本で知ってほしいですね。

【山口】だいたい、親や先生が薦める本ってなかなか読みたがらないでしょう。無理に親の読ませたい本を薦めるのは逆効果かもしれませんね。