市場シェア2位ならではの戦い方

ポテトチップスウオッチャーとして、当時の状況は思い出せる。各社とも飛び道具的なフレーバーを粗製乱造していた。ご当地料理を安易にフレーバー化した完成度の低い期間限定ものや、奇抜さだけが特徴のフレーバーも多かった。「濃厚」の潮流に一定の引きはあったが、ジャンクフード感が強すぎて手を出しづらい層も多かったのではないか。

だからこそ、素材の味を生かす高級路線である「プライドポテト」の市場デビューは衝撃的だったのだ。

「10年前は競合他社と戦うために、同じような企画を出していましたが、今はどちらかというと自分たちの個性をどう出すか、自分たちをどう磨くかに注力しています」(野間氏)

シェア争いで語るのはナンセンスだ

日本のポテトチップス市場シェアは、1位:カルビー71%、2位:湖池屋22%(2017年、富士経済「食品マーケティング便覧2017」より)と、湖池屋はカルビーに圧倒的な差をつけられている。

しかし、少なくともポテトチップス好きの間では、湖池屋とカルビーを単なるシェア争いで語るのはナンセンス、という認識が大勢を占める。湖池屋最大の魅力は、全員が80点をつける商品で市場を席巻するのではなく、一部のユーザーが120点をつけるポテトチップスを複数ラインナップすることで、結果的にオールレンジのユーザーをカバーする商品開発姿勢にあるからだ。

現行の「のり塩」

それは、プレミアムラインである「プライドポテト」はじめ、「じゃがいも心地」「ポテトの素顔」といったナチュラル系、「KOIKEYA STRONG」シリーズに代表される濃厚がっつり系といった、振れ幅のある商品展開に表れている。

1962年に日本で最初にポテトチップスを量産して販売したのは湖池屋だ(最初のフレーバーは「のり塩」)。これはカルビーがポテトチップスを販売開始した1975年より10年以上も早い。この「先駆者にしてナンバー2」という独特のポジションが、湖池屋の現在のスタンス——こだわり抜いた製法を追求しながら、チャレンジ精神も忘れない——を固めたのかもしれない。

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