このように、「笑いが健康にいい」という説は単なる笑い話を通り越し、常識になりつつある。
病は気から。笑いは人の薬。こんなことわざが存在するのも、先人が笑いの効果を経験的に知っていた証左に違いない。
「笑い死に」は実在する!
とはいえ、笑いも度が過ぎると、健康どころか命取りになる可能性もある。
正直、「笑い死に」などという概念は誇張表現の一種にすぎないと思っていたのだが、そんなギャグのような事態が現実に起きうるらしいのだ。
なんと、笑い死にの歴史をひもとくと、紀元前までさかのぼる。古代ギリシアの哲学者、クリュシッポスが酒に酔ってイチジクを食べようとしたロバを見て笑い死にしたというエピソードが残っている。この話は真偽が怪しいが、もちろん現代においても、いくつかの事例が残されている。
スコットランドの出版社、Canongate BOOKSのHPによると、89年、補聴器の開発に従事していたデンマークの聴覚学者オレ・ベンツェン氏がコメディ映画『ワンダとダイヤと優しい奴ら』を鑑賞中に激しく笑いだし、心臓発作で死亡したという。一説には、そのときのベンツェン氏の心拍数は毎分250~500回まで急上昇していたといわれているが、人間の心拍数は毎分50~100回程度が通常値だ。このことから相当な負荷が心臓にかかっていたものと思われる。
アメリカの事実検証サイト、Snopesでは別の事例も紹介されている。
その事例によれば、2003年、タイ・バンコクのアイスクリーム配達ドライバー、ダムノエン・サエン・ウム氏(当時52歳)が睡眠中に笑いだしたという。心配した妻がウム氏の目を覚まそうとしたものの、彼は笑い続け、2分後に息を引き取った。検死の結果、死因は心臓発作の疑いがあるとされている。
笑い死にの原因は心臓発作のほかに脳出血、窒息などがあるようだが、いずれにせよ、自分の意志で笑いを制御できなくなった途端、急激に状況が悪化するのは間違いなさそうだ。
笑いを健康に取り入れた結果、笑い死にしたとあっては、世間の笑い者になりかねない。非常に稀なケースとはいえ、気を付けるに越したことはないだろう。