母親は全くバイオリンができないのに、娘をプロに育てられた理由

●Lesson5 自信を持てる軸をつくる

「私は関西出身なのですが、親が宝塚に憧れて、小さい頃からバレエや体操、ピアノなど、たくさんの習い事をさせてもらいました。でも、どれも広く浅くという感じで。ですから自分の子どもには、いろいろな選択肢から何か一つ得意分野を見つけてほしいと思っていました。それが自分の軸となって自信につながるものになったらいいなと」

撮影=遠藤素子

小林姉妹も、2、3歳の頃から体操、バレエ、お絵かき、工作などたくさんの習い事をしてきた。香音さんがバイオリンを始めたのは6歳のとき。きっかけは、たまたま聖子さんの実家に子ども用のバイオリンがあったから、だそうだ。ピアノとは違って、どこにでも持ち運んで弾ける気軽さに引かれて、選択肢の一つになった。

子どもに合った先生を選びたいと探していたときに、たまたまチラシで見つけたのが、桐朋学園大学の「子供のための音楽教室」だった。

「その先生は、たとえば初めての曲にトライするときも『香音ちゃんがお花畑を走り回る感じを想像してみて』と、子どもがうまくフレーズにのって弾けるように言葉がけをしてくださいました。子どものモチベーションは、大人の言葉がけ次第だとつくづく実感しました」

3歳から始めていたバレエも大好きだったが、集団で演じることが多い。自分のペースで取り組めるバイオリンは香音さんの性格には合っていたようだ。よく褒めてくれる先生の影響もあり、めきめきと腕を上げていった。

先述したように、姉妹が頭角を現してからは、厳しく教育的な母親像が噂された。

「真逆なんですけどね(笑)。私は全くバイオリンはできないし、わからない。だから子どもたちには、先生のお話をしっかり聞いてくるように、とだけは言っていました。そうするとママに聞いてもダメだ、自分でやるしかないと、楽譜にポイントを書き込んだり、レッスンのビデオを見直したりして、だんだん自主的な練習方法に変わっていきました」

こうして、「勉強しなさい」「練習しなさい」を言わなくても文芸両道の姉妹が育ったのだ。

小林 聖子さん
キャリアコンサルタント(国家資格)、マナー講師、幼児教室講師、子育てアドバイザー、マザーリングコーチとして、お母さまのための「エコール・ト・ママン」主宰。名門幼稚園、小学校受験個別指導、カウンセリングも。
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