コロナ時代の老後対策では1つはダメ! 複数の合わせ技でリスク分散

では、これからの老後を迎える人々が、老後資金を準備する場合、どう備えれば良いのだろうか?

まず、老後資金の不足に対応する方法として挙げられるのは、以下の3つである。

①長く安定的に働き続ける
②運用して“資産寿命”をできるだけ延ばす
③ムリムダがないか家計を見直す

まず、①「長く安定的に働き続ける」については、前述したように、多くの人が働ける間は働いて収入を得たいと考えている。問題は、それが可能かどうかということだ。

コロナが日本経済に与えたダメージは大きく、すでに2021年卒学生の新卒採用にも大きく影響を及ぼしている。そして、高齢者雇用も例外ではなく、採用時にこれまで以上にシビアな目が向けられるのは必至だ。

テレワークの導入などで雇用や働き方が大きく変わる可能性も高い。定年前と同じ企業で働くにしろ、子会社や関連会社に出向するにしろ、独立してビジネスを始めるにしろ、より一層、これまでのキャリアやスキルの棚卸しとブラッシュアップは欠かせない。

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要チェック! 2022年4月から徐々に年金制度が変わる

なお、2020年の年金制度改正法案が5月29日の参議院本会議で可決され成立した。これによって2022年4月から徐々に年金制度が変わることも要チェックである。

今回の改正は、年金の受給開始年齢を、現行の60歳から70歳よりさらに後ろ倒して75歳まで遅らせることが可能となる。その分、年金を「繰り下げ受給」すれば、増額された年金を受け取ることができるわけで、一見、できるだけ長く働くことを後押しするかのようだ。

しかしその一方で、年金受給開始時期を前倒しにする「繰り上げ受給」の減額率は0.5%から0.4%へと縮小。働きながら年金を受け取る「在職老齢年金」も、60歳代前半の条件が緩和され、年金と給料の合計額が47万円を超えなければ、年金はカットされない。

これまで、60代前半の人が働きながら、繰り上げ受給を選択すると、繰り上げに伴う年金減額に加えて、在職老齢年金のしくみによる年金減額とダブルで年金が減らされてしまう。

それが改正後は、これまでより小さい減額率の繰り上げ受給の年金を受け取りながら、年金カットを気にせず給料をもらえる人が増える。

要するに、今回の改正によって、年金をもらいながら働くという選択の幅が広がり、今後の年金のもらい方に対する発想やスタンスが大きく変わる可能性が強い。

次の②「運用して“資産寿命”をできるだけ延ばす」については、所有している預貯金や資産のリスク分散などリスクコントロールが今まで以上に重要になってくるだろう。

そして、③「ムリムダがないか家計を見直す」については、「住宅ローン」「子どもの教育費」「保険料」の3大固定費をどうクリアするかが肝心だ。

いずれにせよ、これらの対策は単独で考えるのではなく、①~③のいずれか複数を組み合わせて複合的に行うことをお勧めする。

コロナ禍は、まさに世界的な大災害であり、失ったものは計り知れない。だが、視点を変えれば、「これまで当たり前だと思っていた日常が当たり前ではない」こと、また、「自分の身は自分で守るしかないこと」を現実のものとして感じさせてくれたともいえる。

コロナは人々の意識を変革し、老後への備えのあり方も変えようとしているのだ。

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