「居住誘導区域」に災害可能性のある地域が多数含まれている

一方で、こうした取り組みの中に、大きな問題が含まれている例があります。「人口密度を維持ないしは増加させ、生活サービスやコミュニティが持続的に確保できるよう居住を誘導する」という名目の「居住誘導区域」の中に、災害可能性のある地域が多数含まれているのです。

国土交通省が作成した立地適正化計画の運用指針は、「リスクのある地域は原則として含めない」となっています。しかし、「リスクのある地域を居住誘導区域に含める場合には、災害リスクや警戒避難体制の整備等の防災対策等を総合的に勘案し、十分に安全性を検証することが不可欠であり、これらの検討・検証結果を踏まえ立地適正化計画に各種の防災対策を記載することが望ましい」といった文言もあり、自治体によって対応はまちまちなのです。

このため「土砂災害警戒区域」「浸水想定区域」などに自治体が“居住誘導”している例があります。

しかし、こうした状況も変わることでしょう。万一被害が起きれば、自治体は責任を問われます。

ハザードマップを考慮した保険料率も始まった

長嶋修、さくら事務所『災害に強い住宅選び』(日経プレミアシリーズ)

また災害に対応するにはコストがかかります。いずれ土砂災害の可能性のある区域や、浸水可能性のある区域は、よほどの対応策が施されない限り、居住誘導区域から外れる可能性が高いでしょう。また浸水可能性のない地域では金融機関による住宅ローンの担保評価が100パーセントになる一方、浸水リスクのある地域では50パーセントになるというような違いも現れそうです。要は浸水リスクの低い不動産には融資が行われて資産性が維持されやすい一方、リスクのある不動産には融資が行われにくくなり、資産性の維持は難しくなるというわけです。

楽天損害保険は2020年から、住宅火災や水害、風災に備える火災保険で、国内損保で初めて、水害リスクに応じた保険料率の見直しを行うと発表しました。ハザードマップで洪水可能性などを考慮し、高台などにある契約者の保険料は基準より1割近く下げる一方、床上浸水のリスクが高い川沿いや埋め立て地などに住む契約者の保険料は3〜4割高くします。こうした動きは今後広がるでしょう。

私たちは土地のリスクを調べ、それに応じた対策を行う必要があります。今のところは浸水可能性のあるエリアとそうでないエリアの間で、価格差は見られませんが、やがては安全性に応じて天地ほどの差が開いていくことでしょう。

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