人口・世帯数減少は「大都市の郊外」が高リスク

行政がすべての公的サービスを提供するには限界があります。これまで以上に「選択と集中」の政策と、最適な財政運営により自治体経営力を高めつつ、持続可能なまちづくりを目指していく必要があります。

そのため、街を「人が集まって住むエリア」(居住誘導区域)と「そうでないエリア」に思い切って分類し、行政の効率や暮らしやすさを維持する「立地適正化計画」を、全国1741自治体のうち477の自治体が策定(19年7月現在)するようになっています。

人口・世帯数減少や自治体運営に対する危機感は、田舎のほうが強いと思いますが、今後リスクが浮上するのは大都市の郊外です。都市の中心部から30〜40キロ圏内、ドア・ツー・ドアで1〜1.5時間かかる、「ベッドタウン」と呼ばれる地域です。団塊の世代を中心とする人たちが一斉に住宅を求めて移り住んだ郊外は、新たに若年層の流入がなければ、人口高齢化が加速します。

立地適正化政策で地価を上げる試みもある

こうしたベッドタウンを抱える自治体の多くは、事態の深刻さを理解しています。例えば、埼玉県ではさいたま市、川越市、志木市、戸田市、春日部市など、千葉県では松戸市、柏市、流山市、神奈川県では横須賀市、相模原市、藤沢市などが、立地適正化計画に乗り出しています。

人口増が続いている東京23区で、この計画に着手しているところはありませんが、安心できません。現在は人口増が続く世田谷区のような自治体であっても、いつかは人口・世帯減の局面がやってきます。世田谷区は全国最多の約5万戸の空き家を抱えており、いずれ立地適正化計画を運用しなければならなくなるでしょう。

各地の取り組みの中で面白いのは、埼玉県の毛呂山町です。同町の立地適正化計画は「20年後に公示地価を10パーセント以上上昇させる」と謳っています。人口は20年で17.9パーセント減少しますが、立地適正化政策によって人口密度を保ち、同時に投資を呼び込むことによって地価上昇につなげる狙いです。こうした宣言は欧米の自治体では当たり前のように行われていますが、日本では初の試みです。