手軽にできる一石三鳥の食べ方

免疫力のアップに欠かせないのが発酵食品ときのこ類です。共通点はどちらも「菌」であること。

発酵食品は腸内環境を整える機能を持っています。

腸内には100兆ともいわれる数の細菌がおり、乳酸菌やビフィズス菌のように発酵することで有益な物質を生み出す善玉菌と、大腸菌のような悪玉菌、どちらでもない日和見菌に分類できます。善玉菌が増えると腸の働きがよくなり、悪玉菌が増えると腸内環境が悪化します。

発酵食品は発酵の過程で乳酸菌を増殖させるため、食べることによって腸内の乳酸菌が増え、腸内環境が整うのです。全身の免疫機能のうち60~70%程度が腸に集まっているといわれますから、腸内環境は免疫力を大きく左右するのです。

発酵食品で手に入りやすいのは、麹、味噌、醤油、醸造酢、みりん、魚醤、チーズ、ヨーグルト、発酵バター、塩辛、納豆、漬け物、鰹節、キムチ、甘酒、マッコリなど。折しも会食が減り、家で晩酌する機会が増えている今、マッコリを片手にキムチをつまむのも1つの手です。

現代では忙しい、寝ていたいという理由で朝食を取らない方も多いのですが、チーズだけ、ヨーグルトだけなら食べる時間もあるはず。朝にこうした発酵食品を取ることで、睡眠中に増えやすい悪玉菌をやっつけてリカバリーすることができます。ハーバード大学の研究では、ヨーグルトを毎日食べる人は食べない人よりも糖尿病のリスクが18%減少するという結果が出ています。

納豆に含まれる納豆菌は、腸内の善玉菌を元気にします。低温の状態では納豆菌の活動はストップしていますので、冷蔵庫から出して常温で20分程度置いて、納豆菌が増えてから食べるのがおすすめです。

麹菌はでんぷんやたんぱく質などを分解する酵素を生成するため、体内での消化、吸収がしやすくなります。また発酵の過程で数々のビタミンを作り出します。米麹の場合はビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、イノシトール、ビオチンなど、健康維持に欠かせないビタミン類を作ります。

多彩な栄養素や酵素を取るためにも、麹は毎日、別の発酵食品や野菜と一緒に食べるのが効果的です。熱に弱く、60度以上に加熱すると不活性化してしまうため、生のまま味噌と混ぜて野菜ディップとして食べれば一石三鳥です。

きのこ類はβ-グルカンという免疫機能を活性化する成分を豊富に含んでいます。β-グルカンはきのこに特有の食物繊維「キノコキトサン」の1つ。腸の粘膜にある受容体を通して、免疫の伝令役である自然免疫系のマクロファージ(抗原提示細胞)に直接働きかけて活性化を促します。するとマクロファージは獲得細胞系のB細胞、ヘルパーT細胞などを活性化させ、抗体を作って病原菌を攻撃したり、ウイルス感染細胞を攻撃したりする。つまり、免疫系に対する最初の指令を行う部分にβ-グルカンが直に効くのです。

また、発酵食品もヘルパーT細胞の働きを促しますから、きのこの味噌汁などは免疫力に効果絶大です。

(構成=梶原麻衣子 写真=マッシュルームソフト「食品素材写真集」)
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