「火事場泥棒」の検 察庁法改正案の批判をそらすため
今、コロナ対応で、安倍政権は守勢に立たされている。国民1人ごとに10万円配布する「特別定額給付金」が行われることになった経緯は二転三転して後手に回り、野党だけでなく与党内からも批判の声が上がった。
PCR検査数が、諸外国と比べて圧倒的に少ないことも日々指摘され続けている。
評判の悪い「アベノマスク」は、東京都などの一部を除いてまだ配布されておらず、その間にディスカウントストアの店頭にはマスクが山積みされるようになってしまっている。
今は、まだ感染拡大に関心が集まっているだけに批判は一定レベルにとどまっているが、ピークアウトした後は、安倍政権の対応への批判が集中するのは避けられない。
さらに安倍政権には新たな火種が浮上している。
今、国会で審議中の検察庁法改正案だ。この法案は、国家公務員の定年を引き上げる国家公務員法改正案と1体の「束ね法案」として審議されている。しかし、政府が先に黒川弘務東京高検検事長の定年延長を決めたことを裏打ちする法案として野党側は批判を強めている。
しかも、今は政府をあげてコロナ対応に全力を尽くさなければならない時。どさくさに紛れて成立を急ぐ政府の姿勢に国民の反発が高まっており、SNSでは「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ付きの書き込みがあふれ、10日夜の段階で書き込みは500万件近くに及んだ。
コロナ前のスキャンダルは「過去のもの」になる
国民は、検察官の人事を政権の意のままに操ることへの怒りとともに、コロナ禍のまっただ中に「火事場泥棒」のような形で法改正してせいまおうという政権の姑息さに怒っているのだ。
コロナ対応への不満。そして検察庁法改正案への怒り。コロナ禍が沈静化した後、安倍政権は大逆風にさらされる。その矛先をそらすために、「9月入学」をぶち上げようという発想だというのだ。
確かに入学時期を4月から9月に変えるというのは、子供はもちろん、子を持つ親、教育業界、そして新卒学生を採用する企業など、利害関係者が多く、大論争となるのは必至。コロナ禍後の空気を変えるテーマだ。
秋の臨時国会では、野党側はコロナ対応での政府の不手際を批判しようと手ぐすね引く。森友、加計、「桜を見る会」などの問題も仕切り直しして攻めてくるだろう。
しかし「9月入学」の関連法案が提出されれば国民の関心はそちらに向かう。森友、加計、桜などの、コロナ前のスキャンダルは「過去のもの」にすることができる。と、なれば、政権側の作戦勝ちだ。