来年9月を念頭に、今年9月から「予行演習」する
今、政府内で前提となっているスケジュールは以下の通りだ。
「9月入学」を導入する時期は来年、2021年の9月だ。4月に「9月入学」論が浮上した頃は、今年9月から一気に導入しようという意見もあった。しかし、それではあまりにも性急だし、コロナ禍による混乱に便乗した「火事場泥棒」との批判も受けかねない。そこで目標は「来年9月」と定まった。
杉田氏のもとで進む論点整理を6月ごろ受けた後、文部科学省を中心とした関係各省で協議して法案を作成。秋の臨時国会に法案を提出して成立を図る。
一方、学校教育の現場はコロナの感染拡大が沈静化するのを待ち、それぞれの地域事情をにらみながら学校教育を開始する。遅くとも9月までには再開するだろう。ことしは制度上は「4月入学」のままなので9月はあくまで「2学期」だ。しかし、今後「9月入学」となるのを念頭に、現場で浮上した問題点を整理し、翌年に備えることになりそうだ。来年9月を念頭に、今年9月から「予行演習」するということだ。
「9月入学」は2006年の第1次政権の時からの悲願
安倍氏は、もともと「9月入学」論者だ。2006年、初めて首相になった時、自身の肝いりで政府内に教育再生会議をつくり「大学の9月入学」を打ち出した。
この時の「9月入学」は大学のみを念頭に置いていた。国際基準の「9月入学」にあわせることで留学生や教員の国際交流を可能にするとともに、高校生は3月に卒業してから大学入学までの半年間にボランティア活動などをさせて若者の規範意識を高めようという発想があった。
今回の「9月入学」は大学だけでなく小中高も一斉に行うことを前提にしているので、高卒生がボランティア活動を行う時間はないが、欧米諸国の国際基準にあわせることはできる。安倍氏の方向性と合致する。14年越しの悲願といってもいい。
今回「9月入学」が走り始めているのは、このような政策的な理由だけではない。自民党ベテラン議員の1人は、こうつぶやく。
「簡単に言えば、国民の目をコロナからそらすということだよ」