海外に比べて養子制度が根付かない

日本の体外受精の成功率が、外国の成績よりも極端に低い原因がもう1つある。それは夫婦以外、第三者の配偶子、つまり他人の精子、卵子を使用できないことだ。

前出の谷口はこう指摘する。

「台湾で体外受精の成功率が高いのは、第三者の卵子が使えるからです。これは法律で認められています。インターネットで売買している国もある。日本で行われているのは、精子、あるいは卵子がない、または完全に機能しないと診断された人だけ。一般的ではなく、ごく僅かです」

日本生殖医学会や日本産婦人科学会は、第三者の配偶子使用に関する法整備の必要性を約10年前から訴えてきたが、国会での審議は滞り、現在も成立していない。もっとも法が整備されたとしても、国内で普及するかどうかは別問題である。

「日本文化の特徴と考えますが、自分たち夫婦でつくった子供を育てたい。日本では、海外に比べて養子制度がなかなか根付かないのもその1つの現れです。卵子・精子の提供者が生まれた子供に会いたいと言い出したとき、日本では快く会わせるでしょうか。難しい問題ですが、生まれてくる子供の側の知る権利もあります。妊活は国民の家族観とも関わってくるんです」

妊活は夫婦だけの問題ではない

そして何より問題なのは、不妊治療を受ける患者の数が減少傾向にあることだと谷口は言う。

鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 4杯目』

「そもそも、全国の夫婦・カップルの数が少なくなっている」

厚生労働省の発表によると2019年の出生数は、1899年に統計を開始して以来、過去最少の86万4000人だった。女性の社会進出、ライフスタイルの変化、あるいは結婚するための資金的余裕がないという若年層の貧困問題などがその背景にある。

貧困問題はともかく、さまざまな生き方を許容できる多様化の社会は歓迎すべきである。ただ、少子化は、将来の勤労人口と税収入の減少と直結する。さらなる若年層への税負担、医療では国民皆保険の維持困難につながる可能性がある。

WEBサイトもオープン

妊活は夫婦だけの問題ではないと本田は憤る。

「女性に対して社会進出しなさいと言いながら、少子化の問題も押しつけているような感がある。社会進出するのならば、当然生殖年齢は上がっていかざるを得ない。卵子が古くならないうちに結婚しなさい、子供を産みなさいっていうのは、もはや時代にそぐわない。この状況の中で打つ手を考えるべき。例えば、体外受精以上が必要になったら、現在ではすべて私費。軽自動車が軽く買えてしまうぐらいのお金が掛かる。それでも欲しい人はやっています。でもそこまでじゃなくても子供が欲しいという人はいるはず。少しは負担を減らしてあげられないかと思うのです」

緩やかな婚姻制度の導入、妊活知識の啓発、コミュニティでの子育て、不妊治療の保険適用や公的な金銭的補助、そして新たな家族観の形成——妊活は我々が当事者として、社会全体で考えなければならない問題なのだ。

(撮影=中村 治)
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