歯石の除去には、超音波で歯石を除去する「スケーラー」という医療器具を使う。「保険診療では、30分くらいしかかけないので、目に見える表面的な歯石しか取れません。私は、自由診療で歯周ポケット内の歯石まで手用スケーラーで丁寧に取っていますが、歯は上下で28本あるので、もし全部の歯が対象なら、6ブロックに分けて歯石を除去します。1本の大臼歯でも、歯周ポケット内をクリーニングするのに、約15分かかることもあります」と、若林さんは明かす。
その結果、保険診療では、歯石の取り残しなどが発生しやすくなり、歯周病の治療を長期間受けていても、改善するどころか悪化するケースさえあるという。アンケート調査でも、治療効果に不満を持つ人が44.4%いた。重い歯周病で「歯が危ない」という人は、歯周病の自由診療も選択肢に入れてみてはどうだろう。
【口臭・ホワイトニング】実は、若い女性ほど口臭がキツい
オーラルケアへの意識の高まりで、医療機関で口臭について相談したり、ホワイトニングをしたりする人も増えているようだ。両者とも自由診療のためか、アンケート調査では、治療費の高さに不満を感じる人が6割に上った。
口臭の原因の第1位は歯周病、第2位は口内菌の塊「舌苔」だが、「口臭の強い人の6~7割は、歯周病にかかっているので、その治療が先決です」と、若林さんは説明する。
若林さんは、医療機器メーカーなどとの共同研究で、20~60代の男女約200人の口臭について調べ、2019年に「口臭白書」をまとめた。その結果、「実は、若い女性の口臭が、最もひどいことがわかりました」(同)。女性ホルモンを好む歯周病菌がいるのだが、若い女性は女性ホルモンの分泌が多いので、そうした菌が繁殖しやすいからだという。歯科医は口臭の検査も行っている。検査料金はまちまちで、カウンセリングも含めて2万円程度が相場だが、約2000円の実費のみで検査してくれる歯科医もいるという。
セラミックの食器と同じように、歯も時間が経つと変色してくる。歯の表面を覆うエナメル質には、微細な穴が開いていて、そこに色素が浸漬沈着するからだ。それを取り除く治療がホワイトニング。若林さんは「歯科医院で行うオフィスホワイトニングと、患者さん自身が行うホームホワイトニングの2種類があります」と説明する。
両者とも、オキシフルに似た成分が入った「ホワイトニングジェル」を歯に塗布し、脱色作用で歯を白くする。前者は、歯科医や歯科衛生士が施術するが、後者は、自分でマウスピースの内側にジェルを塗り、毎日2~4時間、歯にはめておく。両者を併用するケースも多い。前者は光照射1回約20分で、1~3回行う。後者は個人差があるが、早い人なら1週間ほどで美白効果が表れる。前者の場合、「前側の歯12本くらいで、1回の料金が1万~3万円になります」と若林さんは話す。
アンケート調査を見ると、治療費が5000円未満という人が半数近くいることから、エステティックサロンなどで行う、セルフ方式の「ホワイトニング」も人気と推察される。低料金なのだが、医療者が管理していないので、リスクが高いことも覚えておこう。