【歯周病】30分の保険診療と歯石除去の限界

歯周病は口内の歯周病菌が歯茎や歯槽骨(歯を支える骨)を侵していく病気で、進行すれば歯がぐらつき、最後には抜けてしまう。日本人の7割以上が罹患している「国民病」でもある。

アンケート調査でも、歯周病の治療中という人が14.9%いた。気になるのが治療回数の多さで、4回以上だった人が合計約6割を占めた。歯科医の若林健史さんは、「歯科医が歯周病をきちんと治療しようとすれば、時間がかかるものなのです」といい切る。

アンケートで治療回数が「1回」と答えた人もいるが、「まずありえません。歯科検診での歯周ポケットのチェックなどを、治療と思ったのかもしれませんね」と若林さんは見る。というのも、治療前の検査やカウンセリングで、1~2回の通院が必要になるからだ。

「私は自由診療を中心に行っています。歯周ポケットのチェックも、保険診療なら1本の歯につき深い部分を最低1カ所調べればいいのですが、6カ所調べています。ほかにも、口内スライド写真を撮ったりするので、検査だけで1時間かかることもあります」

歯周病の治療では、歯周病菌の巣窟である歯石の除去や、歯のブラッシング指導がメーン。「定期検診での治療費を比較すると、保険診療なら約30分で2400円(自己負担3割の場合)、自由診療なら1時間当たり1万~1万5000円が相場です」(若林さん)。自由診療が高額なためか、大半の人は保険診療を選ぶことが多いようだ。

保険診療にも落とし穴がある。軽度の歯周病なら改善しやすいが、重度の歯周病になると、治療効果を期待しにくくなるというのだ。「診療報酬が低いので、あまり手をかけずに短時間で治療しないと、採算が合いません」(同)。