健康で長生きするためにはどうすればいいか。歯科医の堀滋さんは「40代になると全身の筋肉が衰えてくるが、見落とされがちなのが舌周りの筋肉。将来、寝たきりになりたくないという人は、身体だけでなくお口周りの筋肉もしっかり鍛えたほうがいい」という――。(第2回)

※本稿は、堀滋『ウイルスも認知症も生きづらいのも、すべて歯のせい?』(小学館)の一部を再編集したものです。

ご飯を前に手を合わせる老夫婦
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食事をよく噛むことで口の中がきれいになる

【患者】むし歯になりにくくて体にいい食材ってありますか?

【歯科医】難しい質問ですね。そんな食材を開発したらノーベル賞ものですよ(笑)。食べ物というものは、「これだけを食べればいい」というものはない。たとえば、「歯を丈夫にするためにカルシウムを摂ろう」と言って、カルシウムだけたくさん摂っても意味がありません。

カルシウムはリンとのバランスによって吸収される。つまり、身体の中に栄養を取り込もうと思ったら、ひとつのものを食べるんじゃなく、なんでもバランスよく食べることが大事。

【患者】余計な糖質を減らして、バランスよく食べるのが基本ですね。

【歯科医】そうです。あとは、食べ物を口に入れたらよく噛むこと。

【患者】たしかに、よく噛んで食べろとは言われますよね。

【歯科医】縄文時代と現代人だと、咀嚼の回数は10分の1以下に減っているんです。噛まないで済むような、やわらかい食べ物や加工食品が増えているからですね。ヨーロッパの実験では、ハーブや未精製の穀類を中心とした石器時代の食生活を4週間続けたら、歯磨きや歯間ブラシを使わなくても歯周病が改善したという報告があります。

繊維質の多い食べ物は、歯の汚れをからめとってくれるんですよ。だから、よく噛むことは口の中をきれいにして健康を保つことにつながっているんです。